先日の「SCビジネスフェア」セミナーのいくつかで、低価格販売による傷みが語られた。収益性の低下もさることながら、販売スタッフを確保するための労働条件を提示できないことにつながっている。語り手はそれぞれの立場から深い思いを示したが、厳しい競合の中で勝つための競争の〝自由〟、上昇傾向とはいえ〝最低〟しか決めていない賃金の規制が歯止めを失わせているように映る。
日本は先進国の中で唯一、労働者の賃金が低下している国だという。それが購買力を削って社会の持続可能性を危うくしている。そこでこの春、賃金の引き上げをすべきだという声が、経営者団体からもアナウンスされるようになった。とはいえ、各企業がそれぞれに収益を追求する中で全体として続いてきた賃金が下がる構造を変えることは容易ではないだろう。
そこで国は税制で優遇して後押しする構えではある。
しかし賃金が下がっても大企業の内部留保はコロナ下でも増え続けている。企業減税を進めてきた結果の一つだろうから、企業に減税しても賃金に回らないのは分かったのではないだろうか。むしろ持続可能性を危うくするまで突き進んでしまう競争、低賃金労働を容認する仕組みをどうにかした方がいい気がする。
(光)