《視点》見ない方がいい

2022/04/01 06:23 更新


 「高くなった商品ならスーツケースから出さないで。見ない方がいい」。ある量販店向けレディスアパレルメーカーの担当者は大手専門店チェーンのバイヤーからそう言われたらしい。商談の場での出来事だ。

 今は原料高や物流費上昇に加え、1ドル=120円台の6年ぶりの円安により、仕入れ価格が大幅に高騰している。アパレルメーカーにとってはかつてないほど深刻な状況で、このままでは「会社が厳しい」ではなく、「会社がもたない」という切迫した声を経営者、現場から聞く。

 店頭価格に転嫁していかなければ立ちゆかない事情は小売りサイドも知っている。22年以降は、店頭価格を順次上げていくという発表をしている大手専門店も少なくない。

 問題はそれが現場まで浸透していないということだ。長年消費者向けビジネスをしてきたバイヤーが価格に敏感なのは分かるが、見たくないから商品をスーツケースから出すな、と言うのでは首をかしげてしまう。

 消費者を魅了する新しいファッションであれば、価格は通る。アパレルと小売りは手を携えて、今の難局を切り開いて欲しい。

(森)




この記事に関連する記事