先日、あるポッドキャスト(インターネット上で音声や動画を公開する方法)を聞いていた時のこと、「良い観察とは、それを理解して終わるのではなく、そこから新たな仮定や問いが生まれてくるものだ」といった趣旨の話があり、なるほどと思わされた。裏を返せば新たな問いや仮定が生まれてこなければ、それは物事をしっかり観察できていないということ。
これは取材や記事についても同じかもしれない。こと観察対象をファッション業界に置き換えた時に、業界が厳しい理由を説明する言葉はいくらでも出てくる。直近ではコスト高やコロナ禍、在庫過多にセールの常態化、同質化など挙げればきりがなく、特に何も考えなくてもすらすら出てくるレベルだ。
ただ、そこで止まってしまってはいけないのだろう。例えば、こうした厳しい中でもECの活用や異業種との協業に挑戦し、結果を出している企業も多い。そこからなぜ健闘しているのかの新たな仮定や問いを生み出していかないと、業界を理解して分かったつもりになって終わる「悪い観察」にとどまってしまう。
何かと初心を思い出すことの多いこの季節。業界の「め・て・みみ」となり、次のファッションビジネスが進むためのヒントになるようなものを書かねばと改めて思い知らされた。
(騎)