《視点》CO2はダイヤモンド

2022/05/24 06:23 更新


 国内のメガバンク各行が石炭採掘関連への新たな融資を停止すると発表した。カーボンニュートラルへの対応の一環で、火力発電の主要燃料である石炭そのものに対しても厳しい目が向けられている。

 石炭はエネルギー資源に乏しい日本にも埋蔵し、明治以降には九州や北海道で盛んに採掘されて〝黒いダイヤモンド〟と呼ばれた。ちなみに合繊産業にとっては初期の原料は石油ではなく石炭であり、カロザースの発明したナイロンは「石炭と空気と水から作られた」が売り文句だった。

 50年代に中東で大油田が発見され、世界の原燃料の主役は石油に代わったが、どちらも主成分は炭素。産業革命以降に掘り起こした石炭や石油がCO2(二酸化炭素)となり、地球温暖化や気候変動を引き起こして人類に返ってきている。

 今、次世代の技術として注目されているのがCO2を回収・貯留する「CCS」やCO2を化学品原料などに利用する「CCUS」だ。グーグル親会社のアルファベットやメタ(旧フェイスブック)がCCSプロジェクトに1000億円以上を出資するなど新たな投資対象になり、ユニコーン企業も生まれている。CO2排出削減を目指す脱炭素とは、裏を返せば〝活炭素〟のこと。CO2がダイヤモンドになる時代がやってきている。

(恵)



この記事に関連する記事