ある繊維商社では、サステイナビリティー(持続可能性)関係部署のメンバーが少し前は数人だったが、今は30人以上になっているという話を聞いた。一方、中核事業の一つであるアパレルOEM(相手先ブランドによる生産)の人員は削減された。OEMは国内需要の減少に伴い、一件当たりの受注量は減っているとみられる。このような合理化の話はよくあることで、身近でもある。
ここからは推測だが、アパレルOEMの売り上げが減ったとはいえ、当面は収益を支える中核事業。おそらく数量の減少を件数でカバーしようと奮闘しているのだろう。効率が低下する中での人員削減となれば、一人当たりの業務負担は重くなるばかり。この商社の場合、主要顧客である大手小売業数社を若手の課長が1人で担当することになったようだ。新規案件にも関わるようにと指示が出ているそうで、その様子を外から見ている取引先の役員は「気の毒で見ていられない」ともらしていた。
新しい部署の立ち上げや既存事業の合理化など、何かの過渡期にはどうしても組織の中でひずみが生まれてしまうのは仕方のないことだとも思う。ただ、そういう時にこそ無理をさせすぎていないか注意を払わなければならないはず。サステイナビリティーを語る企業ならなおさらだ。
(嗣)