先月、生地見本市の取材で久しぶりにフランスに出張に行ったときのこと。展示会の初日に、年金改革の支給開始年齢引き上げに反対する大規模なデモが行われるとのことで、パリ市内の公共交通機関のストライキが実施された。電車や地下鉄が完全に止まるわけではなく、間引き運転となったため事なきを得たが、それでも当日のパリ在住者の来場はやや少なかったようだ。
「急に行き先が変更となり途中で降ろされ、だいぶ時間がかかってしまった」というケースもあり、苦労しながら会場を訪れた人も多かった。ただ、現地の人は皆慣れた様子で、市民革命で権利を勝ち取ってきた国の感覚は、やはりだいぶ違うものだと思わされた。
日本でも値上げや生活の厳しさが報道されるが、ストライキはまず聞かない。時間通りに電車は来るし、便利なものだと感じられる。一方で賃金はなかなか上がらず、じわじわと物価高が進行している。なんだか、便利さの代償を支払っているような気がして、果たして正解は何なのか、改めて考えさせられた。
(騎)