7月4日から開かれた素材見本市のプルミエール・ヴィジョン(PV)パリ。折しもパリ郊外での警官による北アフリカ系少年射殺をきっかけに起きた暴動が大々的に報じられたこともあり、その影響が懸念された。
PV会場は大きな暴動が起きた場所からはだいぶ遠く、展示会自体は滞りなく開催された。出展を取りやめた出展者はいなかったようだが、会場では「中国の顧客が報道を見て来場を控えたケースがあった」といった声も聞き、少なからず影響はあったようだ。
幸い暴力的な行動は比較的早く鎮静化に向かった。米国のBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動のような大きなうねりになるかと思いきや、現状はそこまでの広がりを見せていない。現地の人からは「若者たちがただ暴れるきっかけがあっただけだ」という批判的な声もしばしば聞かれた。
暴動が収まったのは良かったが、社会に対してうっ屈した思いを抱える低所得の若年層が多いことは変わらない。それは低価格市場とラグジュアリーに二極化してきているとの指摘にも合致する。社会の分断に対して、繊維・ファッション産業は何ができるのだろうか。改めて考えさせられる欧州での見本市取材となった。
(騎)