古着屋や古本屋、クリエイターのショールーム、コロッケ屋。古い長屋や、廃れた市場の跡地を再利用して、個性ある若者が開業する。名古屋のある街ではそんな店が増えていて、聞けば、ある大家夫婦の働きかけによるものだという。
夫婦は親族の他界を機に、街に点在する空き物件を受け継いだ。空き家が増え、空洞化した街。できるなら多様な店舗を誘致し、街に新たな風を吹き込みたいと考えた夫婦は東京から帰郷。「ルックブック」と称して空き物件の特徴や魅力を手書きして本を作り、夢ある若者が出店するイベントに足を運んで配布した。開業してほしい人たちが集まる場に自ら赴き、思いを伝える。夢を持つ若者たちが古く味のある物件にひかれ、開業を決めた。
大家と借り手、それぞれの考えや思いをマッチングする空き家のオンラインプラットフォームも盛り上がりを見せている。利益や効率ではなく、夢を持つ人とそれを支援したい人、両者が「気持ち」でつながる場所を作ることが、途絶えた街のにぎわいを取り戻す一歩となる。
(桃)