ある縫製企業の経営者の話を聞く機会があった。00年ごろ、ファクトリーブランドの営業で地方専門店に行くと、「今忙しいから、そこで立って待っていて」。1時間ほど立って待っていると「何で立っているの？」と言われたそう。「服を売るのは本当に大変。アパレル営業の人は本当に頑張っている」と当時を振り返っていた。
この話を聞き、記者にもよみがえった記憶があった。かつて地方の有力専門店の経営者にアポイントを取って取材に行った時のこと。約束の時間に行くと、「今は忙しい」と経営者。その場で夕方に時間を再調整し、3時間ほど待って訪問。すると今度は、「今から会議だから5分だけなら」と言われ、結局取材はできなかった。出張だったので、最終的には飛び込みで別の専門店を取材して事なきを得た。
縫製工場の社長の話は20年以上前のこと、記者はあれから10年は経っただろうか。それでも、お互い思い出すというのは、理不尽な経験ほど記憶に残るということなのだろう。
（森）
