「パシーマ」という寝具を作る龍宮という企業に日本の製造業の底力を見た。他にない、あるいは他がやらない技術と、品質でも徹底的に磨いた一品に全力をかける。ここまでやるには並々ならぬ努力と根気が必要だろう。それを消費者に売るところまでやるのはもっと難しく、「技術・品質には自信があるのに売れない」と頭を悩ませている製造業は多いはず。
龍宮は〝作る〟と〝売る〟を地道に取り組んできた製造業の一つだろう。パシーマはアトピーに苦しむ創業者が「安心・安全で健康な寝具」を目指して開発した。開発段階から届けたい相手が明確だった。目指す品質水準もはっきりしていた。シーズとニーズの一致は売れる要素として大きかっただろう。
それでもすぐには売れない。軌道に乗ったきっかけは第三者(大学の研究者)のエビデンス。そのお墨付きが口コミとなり、地方の小さな製造業の声が消費者に届き始めた。研究者との出会いは幸運だったのかもしれないが、目的が明確な商品開発と、それと同じ熱量で売ろうと粘り強く動き続けたことが引き合わせた縁だったはずだ。
(嗣)