先日あるセミナーで、繊維リサイクルに長年取り組んできた教授が「以前は繊維to繊維のリサイクルでは、良い糸ができないと言われていた。だけど良い糸の定義は様々。時代に合わせて定義を変えていくべき」と述べ、なるほどと思った。例えば綿糸。強度や白度といった部分から見れば、反毛わたから作った糸は通常糸に比べ劣るのは明らかだ。だが現在では、反毛わたから作った糸をサステイナブルで「良い糸」と捉える人も多いだろう。
似たような言葉に「品質の良さ」がある。思い浮かべるイメージは人によって様々。例えばA品率の高さや生地の光沢感、正確な縫製を指している場合もある。記者が製品を取材する際に、「品質が良いんですよ」と言われることがある。なんとなく「そうなんですね」と返しがちだが、それが何を指しているかをしっかり理解すれば、また違った製品の魅力に気付けるかもしれない。
良さの定義や基準は人や時代によって異なるあいまいなもの。だけど、なぜか絶対不変なものと思いがちだ。思い込みを疑うことで、見える景色が違ってくるはずだ。
(騎)