「ビジネスの目的は感動を生むこと」。先日、日韓でファッション流通のコンサルティングを中心に活躍されてきた方と会い、そのような話をしていただいた。感動を生むためには、新しい市場の創出が必要という。
振り返れば、これまで取材したいろいろな企業やブランドのトップは、それぞれの言葉で事業の根底には感動があると説いていた。「子供服のサヱグサ」と親しまれたギンザのサヱグサの三枝亮社長は「売り上げ目標は子供の目の輝きの数」と語り、タペストリー・ジャパンの柳澤綾子ケイト・スペードプレジデントは「持っていると元気になれる商品で女性の背中を押してあげたい」と語った。
人の心を動かす商品は、作り手や売り手の幸福感や仕事への誇りがあってできる。「ここで働く時間が日々の支えになるようにもっと良い職場にしたい」とはアダストリアの木村治社長。生きがいを感じられる労働環境が、結果的に好業績をもたらすことを同社が示している。産地や工場は高齢化で閉塞(へいそく)感が漂うが、日本の繊細な技術は人々に感動を与えるはず。感動を売るという発想で新しい活路を見いだせないだろうか。
(麻)