先日、学生時代に足しげく通っていたうどん屋が長い歴史に幕を下ろした。告知から閉店までの約1カ月間は行列が絶えることなく、多くの人々が閉店を惜しんだという。しかし自分はというと、SNSで閉店の報せを目にした時はそれなりにショックを受けたものの、行列がおっくうでその最後を見届けることはしなかった。
最近ではSNSの浸透で、同じ趣味を持った人同士が気軽に交流できるようになり「ファンダム」や「界隈(かいわい)」などと呼ばれるコミュニティーが生まれた。それと同時に自身が愛好しているものを主張するときに、知識や経験が一定のレベルに達していなければならない風潮があるように感じる。行列がおっくうという理由で足を運ばなかった自分は、そのうどん屋のファンと名乗ることは許されないのだろう。
閉店に伴い、うどん屋の記念Tシャツが販売されていたので購入した。SNSで見かけた「曲を聴いたこともないバンドのTシャツを着るな」という言説が脳裏をよぎるなか、自分のように「ファンであることを証明するため、言い訳のようにTシャツを購入する」層も一定数いるのではと思った。
(郁)