「生まれてから疲れたことがない」。再来年に引退することを発表した新日本プロレスの社長兼レスラー、棚橋弘至選手の決めぜりふだ。激しい戦いで、ダメージを受けていないはずがない。それでも、試合後に平然とそのように言い切る姿に、ファンは夢と憧れを抱く。
ファッション業界もよく、夢を見せる仕事だといわれる。糸を紡ぎ、生地を織り、服を仕立てて売ることには当然、泥臭さも必要だ。それでも、ショーや売り場を通して、常に華やかな世界を見せるのが、この業界の矜持(きょうじ)だろう。
一方、コスパという言葉が定着して久しい昨今、コストカットの方法を赤裸々に語り、いかにお得な商品かを売りにするブランドも多い。確かに、買う側としては納得感を得られるが、どうにも夢や憧れの部分が欠けてしまうような気もする。
販促の仕方は様々だ。うそをついているのでなければ、売れれば全てが正解とすらいえる。ただ、長く夢を見せてきた業界として、矜持は捨てて欲しくないと願う。
(夏)