《視点》命を守る繊維

2024/12/26 06:23 更新


 先日、両手をやけどした。冷え込む真夜中に湯たんぽに熱湯を入れようとした最中の出来事だった。手元が暗い中で電気ポットから注ごうとした自身の不注意が原因だ。針で絶え間なく刺されるような痛みはいくら流水で冷やしても引かず、半べそで夜間外来に駆け込んだ。

 病院では治療時に包帯を両手に巻いてもらった。その後も自身で定期的に包帯の交換をしているうちに、伸縮性に優れ、肌触りも良い包帯に愛着めいたものも感じるようになってきた。

 医療の現場にも繊維は様々な形で活用されている。最近では、ニットメーカーの福井経編興業が自社の技術を生かし、帝人、大阪医科薬科大学と共同で開発した心・血管修復パッチ「シンフォリウム」が話題だ。生体吸収性のある糸を使い、先天性心疾患のある新生児や乳幼児の治療に用いることで再手術リスクの低減が期待できるという。

 包帯が開発された時代のことは知る由もないが、人々の命を守る繊維の活用法は、太古から現代にわたって模索され続けている。

(郁)



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