工場を継続する難しさを感じた。日清紡テキスタイルが綿スパンレース不織布「オイコス」の自社生産を停止する話を聞いた時だ。
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オイコスは92年に原反販売を始めたロングセラー素材。医療用ガーゼやおしぼり、フェイスマスクの用途が中心で全生産を藤枝事業所(静岡県)が担う。おしぼりの「めんです」は東海道新幹線のグリーン車で長年採用されてきたことで知られている。
停止を決めた背景として説明があった。一つは不織布業界の過剰生産が続いていること。二つ目は生産設備更新のタイミングを迎えていたこと。「設備更新をすると生産能力が上がり、生産量が増えてしまう」という。「供給過剰のなか生産能力が上がるのは当社も、業界も得策ではない」として苦渋の決断をしたようだ。
スパンレース不織布はレーヨン製が多いが、オイコスは綿の風合いを生かした柔らかさ、特殊製法による丈夫さを売りに独自の商売を築いてきた。それだけに無念さをにじませたが、オイコスを通じて蓄積された技術や知見が再び世の中で役立つ商品を生み出す糧の一つになることを期待したい。
(嗣)
