【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19年春夏パリ・コレクションは、注目の若手のショーが相次いだ。スポーティーなムードを取り入れた軽やかなラインが特徴。クチュールテクニックやハンドクラフトの技術を入れながら、バイクにも乗れるなど軽やかに着られる服。それが今の若手のデザインの特徴となっている。
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コシェはもとフランス共産党本部があったオスカー・ニーマイヤーによる歴史的建造物をショー会場に選んだ。インビテーションには世界各国の国旗をプリントした小さな旗が添えられる。万国の労働者インターナショナルへの賛歌というわけではないだろうが、ファッションショーを日常生活を生きる人たちと一緒に楽しむような形にしてきたデザイナーだけに、やはり開放的なムードが漂う。フラットではなく、ゆがみをデザインに取り入れたニーマイヤーの空間に、迷路のように椅子を配置してランウェーを作る。そこに登場するのはコシェらしいスポーティーなムードとハンドクラフトの両軸をベースにしたスタイル。テープ状の生地をカーブさせながら切り替えたドレスに、スカーフをパッチワークしたドレス、クロシェパッチワークやレースをはぎ合わせながら軽やかなドレススタイルを作っていく。襟元からフリルが斜めに流れるブラウス、ビジュー飾りのパンツ、今までよりもエレガントなアイテムが充実している。たくさんの旗をフリルのように飾ったコート、メタル刺繍のデニムブルゾンやボディースーツで手仕事の技術の高さをアピールした。
マリーン・セルは、郊外の公園を貫く長い陸橋で新作を見せた。青空を背景に登場したのは、Tシャツやスカーフをはぎ合わせた立体的なドレス。テーマは「ハードコアクチュール」。アイコニックな三日月のボディースーツの上にドレスを重ねて、日常とクチュールのドッキングをさくれつさせた。いろいろな要素が自由に重なり、心地良い。モーターサイクルウェアに見るファイア柄やワークウェアのワッペン、クラシカルなスカーフ、スキューバのネオプレン。曲線の美しいマーメイドドレスは、レトロな花柄のパイル地で仕立て、テントシルエットのロングドレスには、名所土産のキーホルダーをビジューに見立ててびっしりと飾り付けた。モデルの年齢や人種はさまざま。今回はメンズや子供服も見せた。
アンリアレイジのドレスには、たくさんのビジュー刺繍が飾り付けられる。そのビジューは、時間とともに黒から透明へと色を変え、黒かったドレスは次第に色が無くなり体のラインをあらわにしていく。透明と黒、テクノロジーとハンドクラフトという対極にあるものを取り入れたコレクション。黒と透明の行き来を実現したフューチャーリスティックな素材は、サイエンスマテリアルの研究を続けている三井化学との協業で開発したもの。クリアブラックフォトクロミックというケミカル素材で、太陽光に当たると真っ黒に変化して、蛍光灯の元では黒が段々と透けて透明になるという。アンリアレイジのブランディングを象徴するテクノロジーを生かしながら、手仕事を通じて作り上げた。
(写真=大原広和)