19年春夏パリコレ 若々しく変身、新生セリーヌ

2018/09/29 16:02 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】今シーズンの話題の一つといえば、セリーヌの再スタートといえるだろう。エディ・スリマンをディレクターに据えた初のコレクションは、ナポレオンの眠るアンバリッドに隣接する場所に特別な会場を作って開催された。

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 ショーのスタートを告げる鼓笛隊がリズムを刻む。大きなボックスがすべるように動き出し、その扉が開くとカレイドスコープのようなミラーのオブジェがきらきらと輝く。そこからモデルたちが登場してくる。黒と白のドットの大きなリボンのミニドレス、フリル飾りのベアトップドレスなどミニドレスのガーリーなスタイルが次々と現れる。

 ミニのスタイルと合わせるジャケットはスクエアショルダーだったりラウンドフォルムだったり。メンズは黒いサングラスに黒と白のバイカラーのテーラードスタイル。細いタイと合わせたシャープなシルエットを作る。レザーにスタッズ、レパード、ラメジャカード、スパンコール。シャープなラインに光沢やアニマル柄で変化を作る。

 ショー空間の演出からフォルムや色柄まで、すべてがエディ・スリマンの特徴的なもの。フィービー・ファイロ時代のセリーヌらしさは何一つ残っていない。デザイナーが代わった以上、それは当然ではあるのだが、フィービーのセリーヌが一つの時代を作るだけの強さを持っていただけに、この変化をもろ手を上げて歓迎する人ばかりではないのも事実。一つの時代が幕を閉じた喪失感とない混ぜの気持ちも感じてしまう。

 経営サイドとしては新市場の獲得を進めたいのであろう。エディの作るレディスはフィービーのそれよりも圧倒的に若く、大人の女性が選ぶラインではない。メンズはこれまでセリーヌにはなかったため、これだけで売り上げはプラスオンできる。

 デザイナーが代わり、新たな戦略でブランディングを進めていくということはこういうことなのだろう。ビジネスとしてはそう納得しようとするのだが、どこかで諦め切れない何かを求めてしまう。ファッションシステムはこれでよいのであろうか。そんなことを考えさせられる。

(写真=大原広和)

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