テクノロジーによって、客の買い物体験や店のあり方が大きく変化する。物を手にする消費者の選択肢が広がり、今よりもっと自由にファッションを楽しめる時代がやってくる。
【関連記事】【FB革命前夜 変わる消費/売り方編】
ライブコマース 「ライブショップ!」 信頼されるメディアが熱狂生む
SNS(交流サイト)の普及で、売り手と買い手がダイレクトにつながる時代になった。さらに新たなコミュニケーションの形として注目されているのが、ライブ動画配信中に商品を購入できるライブコマースだ。中国で大人気となり、日本でも17年ごろから広がり始めた。
「ライブコマースは一方向や双方向にとどまらず、見ている人同士でもつながれるソーシャルなコミュニケーション」と話すのはキャンディ(東京)の新井拓郎代表取締役副社長CCO(チーフコンテンツオフィサー)。メディア事業やタレントマネジメント事業を行う同社は17年6月、ライブコマース「ライブショップ!」をスタートした。
ライブショップ!はモデルやインフルエンサーが出演し、ファッションやメイクなどライフスタイルに関する情報をライブで配信する。スマートフォンのアプリ画面には視聴者のコメントが表示され、出演者への質問もあるため「出演者本人が実際に使っている物でないと答えられないし売れない」。
ライブの内容もコミュニケーションのとれるトーク番組という感じで、商品をたくさん売ることが主軸であるテレビ通販に比べて物を売る印象はあまりない。
ステマ(ステルスマーケティング)に敏感な今の世代は「企業に売らされている場合は一発で見破る」ため、信頼されるメディアこそが支持される。そのため、あくまで出演する女の子が売りたいもの、届けたいものを扱い、広告コンテンツとも線引きする。
信頼が高まれば高い確率で購入にもつながる。ハートマークを押したりコメントをつけるなどライブに深く参加してもらい、いかに熱狂や共感を生むかも売れ行きを左右する。一般的なECとの違いだ。信頼や熱狂は、出演者の魅力によるところが大きい。ただ見た目が可愛いだけでなく、「ユーザーとのコミュニケーションがうまい、ストーリー性があるなど〝濃い〟人は反響が大きい」という。
視聴者側の現在の中心は18~24歳の女性。時間があって暇だから、ウィンドーショッピング感覚、好きな子が出演している、新しいお気に入りの子を探したいなど、見る理由はそれぞれだが、「コミュニケーションをとりたい、つながりたいという気持ちが強い」。
短い動画の方が見てもらいやすくはあるが、視聴者との信頼関係をつくるには、ある程度長い動画が適している。今後は「日本もインフラが整備され、通信料を気にせず動画を視聴できる環境になるのではないか」とみている。
ラクサス 児玉昇司ラクサス・テクノロジーズ社長
サブスクリプション 「使いたい」をかなえる
サブスクリプション(購入ではなく利用期間などに応じて料金を支払うもの)サービスが注目を集めている。なかでも月額6800円の定額でブランドバッグをレンタルできるアプリ「ラクサス」は、有料会員が1万5000人を突破。「来年度中には10万人を超える」と意気込むラクサス・テクノロジーズの児玉昇司社長に聞いた。
◇
ブランドバッグは所有しないと意味がないという固定概念はもう崩れてきています。価値の本質はファッションアイテムとして使うこと。お金の使い道が多様になり、「無理してまでブランド物を買おう」と考える人は少なくなるのが自然だけれど、「使えるなら、使いたい」という深層心理は必ず残ったままだと思うんです。
それをかなえるため、しかも色々なバッグを持ち替えれるようにして、ファッションをもっと自由に解き放つ。その手段の一つとして、ラクサスを始めました。
手応えはあります。有料会員になって2カ月目以降も利用する継続率は90%を超え、「思ったより辞めないな」と。一度使えば生活の一部に溶け込んでいくんですね。15年2月のサービス開始直後のユーザーでも、今も半数以上が利用してくれています。
独自に構築したAI(人工知能)を活用して、レンタル履歴や居住地などの属性からパーソナライズしたバッグのレコメンド機能を持たせていることも継続率に貢献しています。
17年1月からCtoCのバッグシェアサービス「ラクサスX」も始めました。現在ラクサスで借りられる約2万点のバッグのうち、2割以上がユーザーの家の中で眠っていたものです。
所得の高い層が「家にあっても使わない、捨てられない」と保管してあったバッグを、使いたいユーザーに回す。そうすると貸す側にとっては一種の空腹感が発生するため、またバッグを買おうと、新しい消費につながります。貸すことを前提に物を買うといった価値観がもっと広がっていくでしょう。