アーバンリサーチが取り組む「グリーンダウンプロジェクト」 サステイナブルにファッション売る仕組み、全社一体で構築

2019/03/22 00:00 更新


 アーバンリサーチは羽毛製品の回収・リサイクルの「グリーンダウンプロジェクト」に参加し、店頭での製品回収、リサイクルダウンを使った商品の企画、販売に力を入れている。

 「お客さんに喜んでもらい、世の中の役にも立つ取り組みとして全社を挙げて取り組む」考えで、19年秋冬はリサイクルダウンの使用量を一挙に10トンまで増やし、約5万8000着を販売する。

限りある資源、大切に使う姿勢共有したい

 97年に1号店を出し、いまや店舗数283、売上高715億円と全国区のセレクトショップになったアーバンリサーチ。「時代とお客さんのニーズの変化を捉えて、商売、商品を進化させてきた」(竹村幸造社長)ことが、成長を支えた。同社は目下、サステイナビリティーに関する取り組みを強化している。

 環境問題や社会問題への関心が高まるなか、「サステイナビリティーを意識した企業運営はこれから必須になる」と考えるからだ。様々な取り組みを進めているが、特に力を入れているのがグリーンダウンプロジェクトだ。羽毛の回収・精製・再利用の仕組み作りと普及を目指すという趣旨に賛同し、15年から店舗で使用済みダウン製品の回収を始めた。

供給量が減少しているダウンを回収し、洗浄、再利用するグリーンダウンプロジェクトに賛同し、15年から回収に取り組んできた

 「初めはどのくらいお客さんが回収活動に参加してくれるか、未知数だった」。そこでまず、社内勉強会を開いた。羽毛の供給量が減少していて、リサイクルの仕組みが不可欠なこと、洗浄した羽毛は、新毛と比べてもそん色ない品質を備えていること、客が長年使った、愛着あるダウン製品が新たに生まれ変わるチャンスになることなどを丁寧に社員に伝えた。

 理解が深まると、接客の中でスタッフが来店客にプロジェクトの意義やメリットを伝えることが定着し、使用済みのダウン製品を持ち込む客の数が増え始めた。16年からは前年に回収したリサイクルダウンを使った商品の企画・販売も始めた。

販売員が接客時に丁寧に意義やメリットを伝えることで、店頭での回収量を増やしてきた

19年秋冬は全社で約5万8000着の販売を計画

 18年秋冬は、主力業態「アーバンリサーチ・ドアーズ」と「アーバンリサーチ」向けで7型、1万1000着を販売した。使用できるリサイクルダウンの量に限りがあるので「最初はそれほど大きな仕掛けは出来なかった」。だが、プロジェクトの意義が浸透し、回収を実施する店舗も広がると、持ち込まれる使用済みダウン製品の量は日を追って増えていった。

 「認知も上がって回収量も増えている。次はもっと広げよう」。特定の素材に絞り、生産量を増やせば、コストを抑えられ、デザインのバリエーションも広がる。社内で討議を重ねた結果、19年秋冬は主力2業態に加え「ロッソ」「KBF」「かぐれ」などコンセプトも客層も異なる業態にも広げることにした。

サステイナブルなだけではなく、ファッションとして価値ある商品を作り、売っていく考えだ

 35型、約5万8000着。前年実績の5倍強という野心的な販売計画になったが、自社のほぼ全レーベルで販売すれば、プロジェクトに全社で取り組む姿勢を幅広い客層に訴求できる。何より「欲しいと思わせる価値とサステイナビリティーの両立がこれからのファッションには不可欠」と判断した。

 製品にはプロジェクトのタグを付けるものの、「サステイナブルだからではなく、お客さんに喜んでいただける商品をしっかり作り、売っていく」。企画、生産から販促、店頭まで一体となって「商売として成果を挙げられるよう、知恵を出し、全社で取り組む」考えだ。



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