【ニューヨーク=小笠原拓郎】20年春夏ニューヨーク・コレクションは、前シーズンのトレンドの流れを組む80年代のイメージとともに70年代を背景にしたスタイルも広がっている。レトロな花柄、ラメニット、ツイードチェック。懐かしい配色を生かしたレトロスタイルが目立つ。
(写真=大原広和)
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マーク・ジェイコブスの会場に入ると、だだっ広い空間の奥に不揃いの白い椅子が静かに並べてある。定時過ぎに始まったショーは、モデルたちがいっせいに現れて弾けるように広がって迫ってくる演出。色とりどりのモデルが輝きながら歩いてくる。
たっぷりのラッフルで描くピンクのドレス、ラメニットドレス、レーステープと花柄を切り替えたドレス。いずれもレトロなムードをはらんでいる。


イエローのパンツスーツにはブリムの広いハット、ボーダーストライプTシャツと合わせたパンツスタイルにはヒッピーのようなハットを合わせる。シルクハットにタキシードのスタイルは、どこか「時計仕掛けのオレンジ」のようなミステリアスなムード。

ツイードタッチのトリミングジャケットや淡い花柄のパンツスーツなど、あらゆるアイテムが懐かしいムードに包まれている。柔らかな笑顔を振りまくモデルたちのレトロスタイルは、昔の映画の一場面を見ているような楽しく切ない気にさせる。なんのギミックもなく見せたナチュラルなムードのコレクションはそれでいて、グッチに代表されるレトロを背景にしたビジネストレンドをきっちりと意識させるものでもある。
マークが9.11の前の晩にショーをしたときのディレクションが70年代フラワーチャイルド。あれから18年を経て、その時のショーと同様に「人生、楽しみ、平等、個性、楽観主義、幸せ、耽溺(たんでき)、夢、そして未知の未来の祝福を表現した」という。「着飾ることの楽しさ、ファッションに対する私たちの純粋な愛、自由な表現、リアクション、アイデア、可能性をもったいぶった身ぶりで受け入れることを思い出させるもの」とマーク・ジェイコブス。

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