メーカーとしてのこだわり~ジャカードプロジェクトを発足~
会社を設立して19年。自らドビーやジャカード織機、染色設備を擁して35000品種からの素材を常時在庫して、見本反は即納、現反も無地なら3日、プリントでも1週間で納める独自の機能が支持されて拡大を続ける宇仁繊維。メーカーだからこそできる企画開発、コスト、納期への挑戦は新たなテキスタイルビジネスモデルとして世界市場でも認知されてきた。時代が同社の登場を待っていたと言っても過言ではない。
――ほぼ20年間成長を続けていますね。
20期目を迎えていますが、今期は前期を僅かに上回る水準で推移しています。昨年末から水玉を中心にプリントが動き出し、1月以降の業績を押し上げてきています。二十年間一度も前年を下回ることはなく、グループ売り上げでは100億円を超える水準になってきました。在庫も2年以上のものはもたない体制を徹底して、利益も安定してきています。国内アパレルの市況が苦戦している中で、決して満足できる数字ではありませんが、欧米や中国への輸出も含めて、我々が攻められる市場はまだまだ大きいと思っています。
――メイド・イン・ジャパンの商品でメーカーとして存在する生き方が支持されている。
私自身が長年、西脇の機屋で技術者として生きてきましたから、会社を作る時にメーカー意識での経済性に立って、より良いものをより安く提供したいとの思いで出発しました。当時はバブルも崩壊して、コスト意識やロスを排除したスピーディな納期などが求められ始め、一方では生産の中国への移転が本格化していて、国内の産地やコンバーターが苦境に立たされてきた時期で、日本の素材を守り、発展させるためにも市場の要望に応える新たな仕組みが必要とされていたと思います。自ら協力工場に織機を設備して、市場とメーカーとしてのコストの両立を考慮しつつ、必要とされる素材を開発し、いつでも納められる仕組みの精度を高めていくことが避けられませんでした。薄地の合繊から出発して、プリント、ジャカード、先染め、レース、シルク複合などにバリエーションを拡大しつつ、それぞれの素材に応じて、北陸や京都、西脇にパートナーとして存在していける工場とのチームを確立、織機や染色機械なども徐々に自前で設備して、メーカーとしての優位性を発揮しながら、素材バリエーションを広げてきました。まずは得意な分野からひとつの協力工場と集中した取り組みを行い、設備もし、その工場でのシェアを高め、安定した生産の仕組みを作っていくという信頼の絆が成長の背景にあります。多様な素材をストックして、即納できる体制つくりのために倉庫も重要な役割でした。中央倉庫とも同じように絆がビジネスを支えてきました。そうして広げてきた幅広い素材のストックと安定供給の確立につれて市場もミセスからヤング、アウターからインナー、小物雑貨、メンズ、スポーツまで幅を広げ、国内の有力デザイナーブランドなどとの取り組みも増えてきています。
――輸出も増え、企業買収なども行ってきましたが。
輸出はひとつの柱事業になってきました。プルミエール・ヴィジョン(P・V)に出展して、ほぼ十年、この間、ミラノウニカやP・Vニューヨーク、インターテキスタイル上海など多彩な海外素材展に出展してアピールしてきました。メーカーとしての姿勢を打ち出して、品質に優れたメイド・イン・ジャパンの多様な素材をストックしていつでも見本反が納められる機能が徐々に支持されてきている手ごたえを感じており、市場は欧米から中国、オーストラリア、中近東まで広がっています。まだまだ広げていける市場は大きいと思っています。
この間、丸増やウインザー、オザキプリーツなどを傘下に入れてきましたが、我々とは違ったデザインや質感の開発能力、新たな加工での付加価値が高められるだけでなく、お互いの素材、人材を交流しあうことで、効率化や新たな企画開発、市場開発につながり始めています。
輸出をてがけて最前線のデザインに自ら触れ、一方では新たなコンバーターとの融合が始まることで、社員一人ひとりの企画開発能力が大きく高まってきています。社員の多くは女子社員で構成されていますが、ファッションが好きだという社員が圧倒的に多い。それだけに海外やこれまでとは違う会社の企画に触れることで刺激にもなり、自ら作り、売っていく姿勢に変化し、新たな企画開発や新規開拓に力を発揮しつつあります。
『5GO JQ P』(ゴーゴージャカードプロジェクト) 実行委員会発足
――新たにジャカードのプロジェクトを立ち上げる。
新たな企画開発として4月から複合、三者混含めた『5GO JQ P』(ゴーゴージャカードプロジェクト)実行委員会を発足させます。プロジェクトでは、まず西脇の協力工場に新たに2台のジャカード織機を増設します。その後北陸工場にも続けて増設し、ジャカード織物を積極的に強化します。
プロジェクトはパート1からパート5まで、それぞれで50台の織機を回していきます。素材のバリエーション、売れ筋の柄、さらに今後新たに開発する柄・アイテムなど様々なジャカードを、このプロジェクトだけで織機250台の常時稼動を目指しています。
5つのプロジェクトを具体的に言いますと、パート1では綿中心のエアージェット織機によるカットジャカード、からみ織ジャカードを、パート2ではポリエステルのカットジャカード、ジャカード オン プリントを展開します。パート3では先染めカットジャカード、先染め調ジャカード オン プリントを、パート4ではふくれ織ジャカード、ゴブランジャカード、ダブル幅ジャカード、最後にパート5ではトリアセテートジャカード、トリアセテートのからみ織ジャカードなどの展開を行っていきます。織機を常時稼働させることで、効率的な生産体制を構築する。コスト削減も目指しながら、見本反は即納できる体制で臨みます。
まさに全社一丸となって「ゴーゴー行くぞ」という意味もこめて、名称を付けました。あわせて綿やシルク、麻などの天然繊維の素材開発にも挑み、大手アパレルとの別注での取り組みも本格化するつもりです。
――課題は?
今、市場では同質化が課題とされ、欲しいものがないとの声も聞こえてきます。市場が求める差別化された素材や上質化への挑戦はもちろんのこと、素材メーカーからトレンド発信できるような素材を作っていきたいと願っております。
またアパレル衣料の買い方、売り方もネットの急速な進化で変化してきていることを注視しています。ネットの進化の中で、新しいスタイルや消費が生まれてくる可能性も充分にありますから、それに対応した仕組み作りも欠かせないと思っています。現状の消費環境は決して楽観できるものではありませんが、先行きの景気動向を悲観的にとらえてはいません。それ以上に我々が取り組んでいける市場の大きさに注目したい。まだまだ可能性はあると思っています。
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宇仁繊維株式会社
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(繊研新聞本紙3月7日付け)