旭化成のプレミアムストレッチファイバー「ロイカ®」を製造するロイカ事業部ロイカ工場(滋賀県守山市)が、日本能率協会「第12回2024グッドファクトリー賞」の「ファクトリーマネジメント賞」を受賞した。工場のマネジメントのスマート化や意思決定速度とその質、「自走」による可視化画面の開発など組織活性化が評価された。
「手書き文化」から大改革
グッドファクトリー賞は、中国、アジア地域と日本国内の生産性、品質向上など体質革新活動に着目し、その過程や成功要因、現場の知恵、働く人たちの意識改革、社会的貢献などを日本製造業の範として顕彰するもの。優良工場の事例を産業界に広く紹介することで、製造業の体質強化と発展に寄与することが目的。
ロイカ工場が受賞したファクトリーマネジメント賞は、総合的に「工場運営」のレベルが高く、全体的にバランスのとれた工場に贈られる。ロイカ工場は①人・データ・組織風土を柱とした工場マネジメントのスマート化②データ・ドリブン(データに基づく)・アプローチによる工場の意思決定速度・質の向上③製造現場メンバー主体(自走)による可視化画面の開発・分析・活用による組織活性化の3点が高く評価された。
ロイカ工場でスマートファクトリー化の取り組みが始まったのは17年ごろ。評価の自動化など単発の開発がスタートした。その後、旭化成グループ全体でDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が本格化、21年にDX中期計画が始まった。ロイカ事業も工場、営業、開発の3極連携で取り組むが、50年の歴史を持つロイカ工場は当時まだ「手書き文化」だった。
データ活用で効率的工場運営へ
そこで22年5月にプロジェクトを立ち上げ、スマートファクトリー成熟度診断(資源、態度、行動、調査を繋ぐ組織パフォーマンスサーベイ)をスタート、データをベースにした判断へと大きく踏み出す。その第一歩は分散して保存されていたデータを、「ものづくりデータベース」に一元管理することから始め、データの見える化、自動化、自立化へとスピード感を持って取り組んだ。
これによって、組織風土も大きく転換し、一元管理された包括的なデータを見て、考えて、タイムリーに質の高い手を打つという効率的な工場運営が実現した。「自走」をキーワードに進めてきたロイカ工場のスマートファクトリー化は旭化成グループの中でも先進事例に挙げられている。
今後さらにMI(マテリアル・インフォマティクス)に使えるデータの蓄積などを進める。また、守山のロイカ工場での先行事例を海外のスパンデックス生産工場にも広げていく方針で、23年にはタイ旭化成スパンデックス(TAS)での取り組みも始まった。
半世紀の歴史を刻むロイカ工場は、古くて新しいスマートファクトリーに生まれ変わった。
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企画・制作=繊研新聞社業務局