【トップインタビュー】MNインターファッション株式会社 代表取締役社長 木原伸一氏(PR)

2023/08/08 00:00 更新



 MNインターファッションは、 “総合エンジニアリング機能”を発揮しながら連結経営を強化する。多様なバックグラウンドを持つマンパワーの統合効果を最大化し、大胆かつ柔軟にチャレンジするプロ集団として、幅広い事業領域でグローバルにビジネスを展開することで新たな付加価値を創出する。

市場の声に耳を澄ます

―企業のレジリエンスが試される時代となっている

 コロナ禍において繊維・ファッション業界は大きなダメージを受けました。そのなかで当社が目指すのは〝地力の回復〟です。「売上高は体力、収益は健康状態」と言われますが、当社は連結経常利益をKPI(重要業績評価指標)に位置付けて、この基礎収益力を早期にコロナ前の水準に回復することが、市場における信用力の素(もと)になると考えています。

 これに加えて、今後の成長戦略として、新しい領域やマーケットにも果敢にチャレンジをします。これらを具体化するために重要なのは、私たちの直接の顧客であるアパレルやチェーンストアの方々のニーズに敏感になることだと考えます。これまでの成功体験や経験則で判断するのではなく、もう一度改めてお客様の声に耳を澄ませて、私たちが求められているところは何処(どこ)なのか、認められているところは何処なのかを、しっかりと社員自らが認識して、一つずつ実行していくことが大事だと考えています。

 商社の主業は、サプライチェーンを繋いで商品を調達することとともに、成長企業や成長市場に対して資金供与することが重要な機能です。この与信に対する考え方については原点に還ることが重要だとみています。商社のファイナンス機能が最も力を発揮するのは、成長するマーケットで、伸長している事業体や経営者の成長スピードを加速させる場面です。今はニッチでも大きな成長を見込める企業を見出して、その成長をサポートすることに力を注いでいきます。

ショールームには、取扱ブランドのアイテム等を常時ディスプレイ

バリューチェーン全体を見渡して 

―グループとしての連結経営を重視している

 MNインターファッションは国内に子会社として8事業会社を持っており、海外にも3つの現地法人以外に7事業会社を持っています。これらを通じたグループ経営をグローバルに推進、拡大しながら連結経営での収益を第一義的に追求していきます。

 商社は、川上から川下までのバリューチェーン全体を俯瞰的に見渡す立ち位置にあります。当社の独自性を発揮しながら、メーカーやアパレル、小売りまでのサプライチェーンに市場変化に適応する組み合わせを提案し、斬新なアイディアを注入することで、新しい付加価値を生み出し、個々の企業の課題や社会課題の解決に貢献できると考えています。それは複数の企業によるプロジェクトであり、バーチャルな事業体と言えます。これらを組み上げることを、私たちは〝総合エンジニアリング機能〟と呼んでいます。

 海外市場においても当社の総合エンジニアリング機能を発揮することができると確信しています。海外は日本市場よりも変化のスピードが早く、多様な商品のアイディアが生まれていますが、その背景となるサプライチェーンが構築できないでいる。そのために成長スピードがダウンしている事例がいくつもあります。ここにもMNインターファッションの商機があるとみており、今後、製販同盟と言える取り組み型の商売の形態を推進して、グローバルマーケットを舞台に積極的に仕掛ける方針です。

成長に必要なアプローチやスピード感

―成長領域に向けた戦略は

 成長領域としてグローバル、スポーツ、ユニフォームを重点分野に位置付けます。グローバルでは、大阪の輸出部隊における織物及び原料販売の再強化を図ります。当社の高機能テキスタイル「パーテックス」によって開拓した販売網に乗せる次の商材の開発に注力。スポーツ・アウトドア分野での接点を強くしていきます。また、ユニフォーム分野では、グローバルネットワークの構築を目指しています。例えば、自社ユニフォームブランドで難燃素材を活用したワークウェア「CHIKARA(チカラ)」の販売にあたっては、欧米及びアジア等において海外現地企業を傘下に置きながら拡販することも検討していきます。

 海外市場に向けては、従来以上に注力します。中国及び香港、ベトナムの当社現地法人を活用してグローバル展開していきます。それ以外に拠点としてミャンマーやバングラデシュに駐在員事務所を、インドネシア、ミラノ、ニューヨークに駐在員を配置してネットワークをつくっている。今年4月には、これらグローバルマーケット情報の一元管理や、打ち手のまとめを担うセクションとして、当社経営企画部のなかにグローバル担当部署を設置しました。現在、欧州や中国、豪州などで製品販売が好調に推移しています。

 新しい原料・素材開発についてはサステイナブル(持続可能な)を重視した開発を、自社の企画開発部に集中的に人材を配置し、全社的な横串を入れながら進めています。紙糸を使用した「WA・CLOTH(ワクロス)」、廃棄衣料品からリサイクルした糸を使用する「BRICO(ブリコ)」などがその代表的素材であり、市場で高い評価を受けています。

―今後の事業戦略のポイントは

 売上高をベースに規模拡大を前提にした戦略を重視します。利益重視では効率化が優先されて既存領域を越えた発想が出てこない。特に新規領域に関しては、スタート時点で慎重になり過ぎると事業が伸びなくなる。あえて目指すべき売上高を先に設定することで、今後の成長に必要なアプローチやスピード感を引き出していきます。成長の持続性の面では、新規事業に向けた投資やM&A(企業の合併・買収)を積極的に検討します。新たな垂直及び水平統合といった手段も検討していきます。

お客様をお迎えする受付スペースは広くシンプルに

心のPMIが大事になる

―統合効果の最大化に向けた進捗は

 人事制度とシステム統合に取り組んでいる最中です。昨年度は旧両社(三井物産アイ・ファッション、日鉄物産繊維事業)のシステムを並行して使っていましたが、これを今年4月から統合しました。新しい人事制度の運用は今年4月から。これに基づく評価制度は7月から開始しています。従来よりもペイ・フォー・パフォーマンスの要素を強く入れていいます。若くて優秀な社員への適正な評価を重視するとともに、長く働いて頂いている社員に対してのセーフティネットは再雇用も含めて設けています。4月から組織改編によって各部課のなかに旧両社の人員がミックスした配置になっており、今、まさに〝人のPMI〟を進めているところです。

 PMIには〝制度のPMI〟と〝心のPMI〟の2つがあると考えています。その意味で制度のPMIは導入を完了しました。これからは〝心のPMI〟が重要になると考えています。異なる企業文化を持つ社員が力を合わせる過程のなかで、お互いの良いところを見つけて、認識を深めていくことが大事になります。会社としても互いのコミュニケーションを深める為の施策、制度を導入しながら、統合効果の最大化を図っていきます。

MNインターファッションのPVV

 Purposeは「未来を紡ぎ、価値と感動を世界へ。」、Visionは「多様な個性 × 自由な発想 × 組織の力で、ファッションの明日を共創します。」、Valuesは「Set No Limits(ボーダーを越える。もう一歩先へ。)」「Be Professional(徹底して磨け。プロとしてやり抜け。)」「Respect Others(多様性を尊重する。信頼に応える。)」「Be Positive(失敗したっていいじゃないか。)」

【profile】1960年6月18日生(63歳)、1984年3月 一橋大学 商学部 経営学科 卒業、1984年4月 三井物産㈱入社、
2003年7月 繊維本部 繊維第三部 第三室長、2007年4月 ファッションビジネス事業部ブランドマーケティング事業室長、
2009年11月 出向 三井物産インターファッション㈱ 取締役副社長、2011年8月 出向 三井物産インターファッション㈱ 代表取締役社長、
2015年6月 コンシューマーサービス事業本部 ファッションビジネ事業部長、2021年7月 三井物産アイ・ファッション㈱ 会長、
2022年1月 MNインターファッション㈱ 代表取締役社長 (現職)


https://mn-interfashion.com

企画・制作=繊研新聞社業務局


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