東レインターナショナル(TI)は、サステイナブル社会への本格的移行に対して、「C&ESG」(競争力強化と環境・社会・ガバナンス)を意識した経営を推進する。TIグループの長期経営ビジョン「サプライチェーンイノベーター」を掲げて①事業ドメインの拡大②事業の高度化・競争力の強化③地域・領域・技術・顧客を繋ぐインターナショナル活動強化、国内外一体運営進化、東レ本体「プロジェクトAP-G2025」との連携強化④経営基盤強化の基本方針を打ち出す。
変化の激しい〝新生紀〟を迎えて
― 今の経営環境をどうみる。
一言で言うと〝新生紀〟の新しい時代を迎えている。気候変動や世界情勢が不安定になるなかで、コロナ前に世界を席巻していた〝グローバリゼーション〟に対する見直しが進んでいます。各国政府において〝地産地消型〟の政策が打ち出されています。そのなかで我々商社は国や地域毎のサプライチェーンをどう組んでいくかに視座を置かなければならない。多極的で、多様なかたちに世界情勢が変化し易くなっているということは、これから様々な新しいビジネスが出てくることが想定されます。その意味で、商社として面白い、大変革の時代を迎えているのではないでしょうか。
この新しい時代に向けて、大事なのは柔軟に物事を捉えること。また、自分たちの競争力の源泉は何処にあるのかを見極めることが非常に大事です。変化する市場に向けて、自らの強みを生かしていくことで、軸のブレない事業構築ができると確信しています。
―経営姿勢として「C&ESG」を強化している。
競争力強化については、我々の強みである東レグループとしての高性能な機能繊維を使って、当社の生産拠点の豊富なバリエーションを生かすことだと考えます。生地や縫製、ユーザーのロケーションなどを考慮しながら最適なサプライチェーンを提案することで、明確な付加価値を創っていきます。
環境対応については、当社にとってビジネスチャンスがある領域です。東レのサステナビリティイノベーション(SI)事業とデジタルイノベーション(DI)事業に連動しながら、繊維だけでなく非繊維も含めて環境問題、サステイナブル施策に力を入れていきます。
社会貢献については、働き方改革を推進します。女性活躍や育児支援、障がい者雇用を含めた施策を充実します。
経営基盤強化では〝3枚の盾〟が重要です。法務コンプライアンス、STC(安全保障貿易管理)、監査によるグループガバナンスをしっかりと機能させることを重視します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)も重要です。昨年にはDX企画推進室を立ち上げました。生産性向上を目的にCRM(顧客関係管理)システムなどの営業ツールを導入するとともに、物流の合理化・効率化を図ります。また経済安全保障に対応するSTC施策のコンプライアンスシステムとのリンクも行っています。
「つなぐ、創る、つき抜ける」
―変化する市場のなかで「サプライチェーンイノベーター」を発揮する。
世界市場の生産拠点として台頭するベトナムにおいて、当社は22年8月に同国中部のクアンガイで100%出資の縫製工場を立ち上げました。ここを拠点に高付加価値型のアウトドア・スポーツウェアなどの生産に注力しています。バングラデシュの縫製の位置づけも見直して、より積極的に使っていきます。消費地でもあり、生産地でもあるインドに対する施策にもしっかり取り組んでいきます。一方、中国については上海を拠点に、内需に対する戦略を強化する方針です。欧米アパレル顧客からの、ノンチャイナによる縫製を求めるオーダーにも対応していきます。
当社には綿(わた)、糸、生地、縫製品までの一貫体制があります。各段階において、情報やノウハウを収集、蓄積しており、これを更に磨き上げていきます。市場では顧客の方が領域に捉われない事業展開を積極的に行っていて、この変化に応える為にも、垣根を越えた取り組みが大切と考えています。長期経営ビジョン「サプライチェーンイノベーター」を目指すにあたり、現在、全社方針として「つなぐ、創る、つき抜ける」を行動指針として掲げています。新しい価値を打ち出す気概が全社的に醸成されてきた手応えを感じています。
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