【トップインタビュー】東レ・オペロンテックス株式会社 代表取締役社長 山地修氏(PR)

2024/03/12 00:00 更新


 東レグループで、ポリウレタン弾性繊維「ライクラ」ファイバーとその高次加工製品の製造、販売及びポリエステル系複合繊維「ライクラT400」ファイバーの製造、販売を手掛ける東レ・オペロンテックス。サステナビリティ(持続可能性)を、21世紀の世界での最重要な共通課題と捉える。昨年末にはグリーンプロジェクト・レポートの発行も始めた。山地修社長にサステナビリティの取り組みについて聞いた。

ジョイントベンチャーとしての使命

 当社は、東レとThe LYCRA Companyの合弁会社で、それぞれと協業し、また、それぞれから多くの恩恵を受けながらここまで成長してきました。今後もその協業体制が変わることはありません。持続可能性に寄与するモノづくりにおいても同じで、機会を迅速かつ的確に捉えた研究開発および商品提案を行うためには、両社との協業は欠かせないことだと考えています。

 ポリウレタン弾性繊維の需要は、全世界的にみると継続的に伸びており、このトレンドは当面続くと見られています。商売拡大のために、当社も海外への拡販を進めるべきとのお声をいただくことがありますが、日本において価値(バリュー)を提供し続けることが、当社の担うべき社会的責務と考えています。今後も海外に軸足を移すつもりはなく、その責務を全うする方針に変わりはありません。

‘Invisible’ but creates ‘Visible’ Value

 当社は、会社としての規模は決して大きくはありませんが、皆様からいただいている期待を具現化し、実現することを通じて社会に貢献し、輝き続けるという意味で‘Small but Diamond’をスローガンとしています。

 また、「ライクラ」ファイバーの特徴から、‘Invisible’ but creates ‘Visible’ Valueを当社製品が社会に果たすべき存在意義と認識しています。国内の黎明期にはその信じられない伸縮特性から「奇跡の糸」と呼ばれました。今では衣料のみならず、身の回りにある様々なものに‘ストレッチ’というバリューをご提供するのが役割です。このバリューを生地に、人々に、そして社会に、提供し続けていきたいと考えています。

グリーンプロジェクト ~「持続可能性」を3つの柱で ~

 「ライクラ」ファイバーは、最近ではストレッチだけでなく他の機能も提供できるように進化してきました。そして今、最も重要な課題として取り組んでいることが「持続可能性」で、その中で不可欠となる「環境負荷低減」は、お客様にとってもとても大事な追加機能だと考えています。

 グリーンプロジェクトは、22年6月に開始しました。この中で、過去からの積み重ねをさらに強化することに加えて、バイオ由来原料の導入やコンシューマーリサイクルなどの新たな取り組みを実現すべく、全社挙げて検討してきました。昨年12月にはその活動をレポートとして公表しました。

 プロジェクトは、「企業としての責任」、「製造工程における環境負荷の低減」、「未来を守る持続可能な開発」の3つを柱にしています。

 「企業としての責任」では、10項目のCSRガイドラインを定めて推進しています。

 「製造工程における環境負荷低減」では、これまでの製造工程や物流での省エネの徹底、水や紡糸溶剤のリユース、リサイクル、荷資材の削減などに継続して取り組むとともに、石化由来原料の使用量削減と、GHG(温室効果ガス)排出量削減を目的に、原料の脱石化・バイオマス化も検討しています。

 「未来を守る持続可能な開発」では、コンシューマーリサイクルの導入も視野に入れています。お客様の工場で発生する廃棄対象の糸や生地、さらには使用済みの廃棄対象製品を回収し、再び原糸にリサイクルする。また、繰り返し使えるものは可能な限り繰り返し使う。まさに「サーキュラーエコノミー」です。

 回収した最終製品を分解し、2~3成分の繊維素材の中からポリウレタン成分だけを取り出す技術に目途をつけました。特許も取得し、今年度末には設備を導入し、24年度からテストランに入る予定です。

東レ・オペロンテックス㈱滋賀工場(滋賀県大津市)

「グリーンタイプ」製品拡大へ

 私たちは、グリーンプロジェクトの3つの柱を実践する当社工場で製造された製品を、「グリーンタイプ」と呼んでいます。

 現在販売しているグリーンタイプ製品は、

①優れた耐久性で製品長寿命化に寄与するレギュラータイプ(T-127、T-127C)

②プールの塩素水による水着の脆化や加工工程の塩素処理による生地の脆化を抑制する耐プール水タイプ(T-176E、T-254E)

③繊度や物理特性などを均一かつ安定させ衛材製品の生産安定化に貢献する衛材用タイプ「ライクラHyFIT」

④染色工程の削減で汚水、CO2排出量を低減するブラックタイプ(T-127Z、T-327Z)

⑤消臭性能付与工程削減でCO2排出量を減らす消臭タイプ「フレッシュFX」(T-327C)

⑥再生可能なバイオ由来原料とリサイクル原料を使用した「ライクラT400エコメイド」などです。

これらの原糸の拡販に加え、バイオ由来原料と、リサイクル原料混の商品比率を今後引き上げることを最優先課題に位置付けていきます。

 私たちの使命は、世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立を巡る難題に対し、革新技術と先端材料で、本質的なソリューションを提供していくことです。

半世紀を超えて、新たなステージで「奇跡の糸」を実現します。

【profile】

1961年 香川県生まれ、1985年 京都大学大学院修士課程修了、東レ入社、2013年 東レ・オペロンテックス理事就任、2014年 取締役就任、2021年 6月 代表取締役社長就任


本社 : 〒530-8222  大阪府大阪市北区中之島三丁目3番3号 中之島三井ビル TEL.06(6448)6570

滋賀事業場 : 〒520-8558  滋賀県大津市園山一丁目1番2号 TEL.077(537)1186

https://www.toray-opt.co.jp

企画・制作=繊研新聞社業務局



この記事に関連する記事