八木通商は、商社としてのアセットを活かしながらグローバルマーケティング&マーチャンダイジングを掲げ、変化し続ける世界のライフスタイルに対応したラグジュアリーブランドを市場に供給する。欧州における実績と信頼を背景にした、豊富なブランド育成のノウハウを発揮し、世界市場を視野に入れた成長を加速する。
主要都市の百貨店&インバウンドで好調
——今の市場環境は
ファッションビジネスを取り巻く情勢は、コロナ禍のなかで蓄積されたマネーが、繰越需要によって、日本市場では今年3月頃から小売市場が活況になりました。しかし、この秋には消費の減速感が現れており、中国以外のインバウンド需要が景況を支えている状況ではないでしょうか。私たちの事業にとってインバウンド需要の動向は大きな影響がありますが、当社がディストリビューションし、リテールで販売しているブランドについては国内主要都市の百貨店で好調な販売をみせています。
欧州の有力ブランドとの取り組みでは、相手先とのネゴシエーションが最も難しい。実際に日本の多くのアパレルメーカーや商社は苦渋を舐めてきました。その難易度の高いタフな領域を担うことで、欧州ブランドに強い当社の存在感を発揮できると考えています。
アパレルやSPA(製造小売業)が海外ブランドと新たに、ロングランなビジネスを求めるのであれば、当社が介在してビジネスに関与していく。そのハンドリングのノウハウを当社は持っており、ビジネスパートナーとして貢献することができます。
アジアに熱い視線
——注目する市場は
韓国や台湾、中国などアジア市場に注目しています。これらの現地企業と協働で市場開発することを考えています。現在、絶好調の英国ブランド「マッキントッシュ」、仏アクセサリーブランド「アレクサンドルドゥパリ」で、アジア市場を対象にしたグローバルマーケティングを進行していきます。先日も韓国と台湾の有力アパレル、SPAと商談しましたが、各社とも八木通商を通じたビジネスへの期待は高い。協働に向けたオファーも他に数多く入っています。
——具体的な取り組みは
ヘアアクセサリーの世界唯一のハイブランドである「アレクサンドルドゥパリ」が非常に好調です。フランス製の洒落たデザインが幅広い年代に支持され、日本市場では百貨店売り場において大きな伸びをみせています。欧州でも着実に市場が広がり、アジア市場では台湾で販売を開始し、韓国でも本格販売に向けた準備を整えています。世界的なヒットを受け、フランス生産によるキャパシティーの倍化を図っています。
仏発のレインウェアブランド「ケーウェイ」は、機能性とデザイン性を兼ね備えたナイロンジャケットが有名で、欧州ではレインウェアの代名詞として定着。可能性のある良いブランドであり、日本市場での認知度を高めて売り上げを伸ばしていきます。
——欧州の工場へ投資している
イタリアの仕入れ先で、80社ほどの中小規模の工場へは長年に亘って投資しています。特にコロナ禍では、事業継続を支えるための援助に注力しました。これら工場はコロナ明けの現在、当社が求める物作りに大いに応えてくれています。販売先のセレクトショップの需要に対し、新しいサンプルを即座に作成してくれてもいます。イタリアなど欧州における八木通商の知名度や信頼感は高く、アパレル、テキスタイルやシューズ、バッグなどの各産地における存在感は大きいことを実感します。
ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)による不況で、英国での物作りが難しい局面にあり、欧州地域でのサプライチェーンの再構築を図っています。そのためイタリア企業が活用し物作りのセンスが良い、ルーマニアやブルガリアなどのファクトリーへの投資を検討。最初はイタリア企業との合弁で投資を行うことになるでしょう。
ブランドは資産
——今後の事業戦略は
大型ブランドをヒットさせることです。これまでも「モンクレール」の市場を拡大し、「マッキントッシュ」を買収するなど、大きな仕掛けをしてきました。ファッション市場でブランドを成長させるためには、しっかりとした投資が必要です。また、日本市場で売れる仕組みを作らないといけない。そのためには欧州ブランドの製品を作るファクトリーやマーチャンダイジングチーム、デザインチームとの協働が不可欠です。この協働に対して、当社はボリュームビジネスで期待に応えなければならない。この互い信頼をベースにした”人と人“との関係や、企業戦略が合致した協力体制が、良いビジネスには欠かせません。
ブランドビジネスは長期的な視野で取り組むことが大事です。そして「ブランドは資産」であることを認識し、その価値を常に高めていかねばなりません。その意味で新しく導入した伊ラグジュアリーカジュアルブランド「C.P.カンパニー」には非常に期待をしています。これこそ本物のイタリー・ブランドですから、短期的な販売戦略を採るつもりはなく、来年早々に旗艦店をオープンする予定です。既に多くのセレクトショップからの期待が大きいです。日本市場において一定の広がりをみせながら”良質なブランド“として市場認知が確立した段階で、百貨店のショップインショップとして展開することにしています。
好調なテキスタイル輸出
——輸出事業の状況は
テキスタイル輸出が売り上げ、利益ともに好調です。当社のミラノやパリの拠点を通じて、伊ラグジュアリーブランドや仏オートクチュールハウスと、メイド・イン・ジャパンのテキスタイルを共同開発して販売が伸びています。効率的な手法で利益を重視しながら、期待通りの伸びを示しています。今後は、売り先となる欧米市場の動きを注視しながら、良い条件とタイミングが合えば、日本の国内産地で優れた技術を持ったテキスタイルメーカーへの投資も検討していきます。
——新しい役員体制となった
今年6月に、住吉聡代表取締役常務と八木洋三常務取締役の2人が、代表取締役副社長に就きました。住吉副社長は商社業、ディストリビューションを多く経験し、M&A、海外合弁などを通じ、幅広いネットワークも持っています。洋三副社長は商品やブランディング分野に知見があり、各種デザインや広告宣伝手法の開発など、マーケティングを得意にしています。二人が影響を与え合いながら、双方の分野を見渡せる体制をとりました。次代を展望し、世界市場で更なる飛躍を遂げる体制構築を推進していきます。
企画・制作=繊研新聞社業務局