撥水(はっすい)加工で洗濯回数が減らせ、子育てや仕事に忙しい女性が1枚で素敵に見えるドレスを――羽倉綾乃さんが作るサステイナブル(持続可能な)なファッションブランド「アヤノハクラ」の「濡れないラップドレス」がソーシャルプロダクツ普及推進協会の21年の「ソーシャルプロダクツ・アワード」の自由テーマ(生活者が持続可能な社会作りに参加できる商品・サービス)で「ソーシャルプロダクツ賞」を受賞した。ドレスは体形が変わっても長く着続けられ、洗濯回数を減らすことでマイクロプラスチックの海洋流出を減らすことにも貢献できる。受賞商品は、受賞作を集めた展示販売会(3月2日まで大丸東京店、3月5~14日に丸井錦糸町店)で展示販売する。
やりたいこと、伝えたいこと、たくさんある
羽倉さんはドイツ在住。展示販売会では本人が店頭に立って思いを伝えたかったが、ドイツで続くロックダウン(都市封鎖)や帰国後の隔離措置などを考えて帰国は断念した。パンデミック(世界的大流行)の影響で丸1年帰国できない中、改めてサステイナビリティーや日本のジェンダー問題について考え、行動できないかと考えたという。
羽倉さんに聞く
――この1年間どのように過ごしていましたか。
自分が渡航できることを前提に物作りや販売を考えていたもので、「厳しいかな」と思う時期もありました。ただ、こんな時期だからこそ将来に向けたブランディングに力を入れ、パンデミックにも耐えらえるビジネスモデルを作らなければならなりません。
私自身、やりたいこと、伝えたいことがたくさんあります。女性の一生に添う服を作ること、環境に配慮した服を作ること、地球に優しい生き方をすること、菜食主義であること。実際に色々と発信しているので、「この人は何をやりたいんだろう?」と思う人もいるかもしれません。ですが、今は種をまき、耕しているところです。この先に芽を出し、実るところまで自分では見えていますが、そこまでのシナリオをよく分かる形で見せなければならないと思いました。これからも、着実に、終わりなく発信していきます。
――日本のファッション業界でもサステイナビリティーへの意識が高まってきた。
どんなに環境や社会に配慮された服でも、数回着て捨てられてしまえば問題解決になりません。エコ素材を使うのも良いですが、1枚の服を長く着て欲しいという発信を続けたいです。
受賞したドレスはポリエステルを使っています。世の中は脱石油の流れがありますが、綿の栽培には大量の水や農薬が使われるのに対し、ポリエステルは土壌に対しての負荷は低いです。とはいえ、再生ポリエステルに替えられないかとも検討しています。
石油由来素材の問題の一つに洗濯時のマイクロプラスチックの流出があります。フランスでは25年から販売する洗濯機にはマイクロファイバーを捕捉するフィルターを付けることが義務づけられました。EUの環境に対する意識は高く、動きの速さには驚きます。マイクロファイバー流出の問題が解決されたら、ポリエステルのメリットにも改めて注目されるのではないかと思います。問題に対する良しあしを単純に決め付けるのではなく、使う人にも考えてもらいたいと思っています。
(繊研新聞本紙21年3月1日付)