“BAR25”という伝説は未だに語り継がれている。毎週末、入場規制となるほどの人気絶頂の中、惜しまれながら2010年にクローズした。わずか約6年という営業年数にも関わらず、後に映画化され、映像となってその存在は世界各地へと広まっていった。そして、当時のファウンダーたちはそれぞれ違った形でベルリンにおけるクラブカルチャーの重鎮となっていった。
特に、最重要人物であるJuval氏率いるHolzmarktクルーは政府やデベロッパーとの土地争いを得て、BAR25跡地の使用権利を勝ち取り、新たなプロジェクトを始動した。それは、ベルリンのど真ん中ミッテ地区にある広大な更地にクラブ、アパートメント、レストラン、シアターなどが集結した複合施設を作る計画である。
このことに関しては以前にインタビューさせてもらっているので、こちらを参考にして欲しい。
そこから2年以上の月日が流れ、本当に完成するのだろうか?と疑問に思っていたところ、ついに「Holzmarkt25」のグランドオープニングのニュースが舞い込んできた。5月1日のメーデーに重ねたオープニングというのがこれまた憎い演出であり、まさに”労働者の祭典”とはこのことであると思った。
「Holzmarkt25」とは、クルーのオフィスやクラブ、レストランのある通りHolzmarktstr.にちなんで付けられたネーミングである。オープニング当日は祝杯をあげに来た多くのファンが列を成し、通りからはモダンなビルが立ち並ぶのが見え、中に入ると巨大なミラーボールが出迎えてくれた。
さらに奥に進むと臨時で設置されたステージがあり、各々の衣装に身を包んだ人々が踊り狂っていた。この日は冬物のジャケットが必要なほど肌寒く、曇り空の予報だったにも関わらず、オープニングパーティーが盛り上がってきたと同時に一気に晴れ間が広がり、歓声が沸き上がった。これぞベルリンミラクルである。
さらに奥には、BAR25の面影をそのまま残した野外ステージと飲食が出来るオープンスペース、木造のバーやカフェがあり、ヒッピー要素溢れるオブジェとシュプレー川が一望出来るロケーションが最高の演出となっていた。この日は見ることはできなかったが、地下に入って行くと本格的なコース料理が食べれる最先端でスタイリッシュなレストランとバーがあり、ここからもシュプレー川が一望できる。
Holzmarktが発案するアイデアは唯一無二であり、世界を魅了するセンスとパワーを持ち併せている。インターナショナルで最先端と言われている人気の街ベルリンにおいても、どこか”芋っぽい”ドイツさがあるのは否めないが、彼らは突き抜けたアイデアとDIY精神を持っているように感じる。
少し前ではあるが日本においても有数の経済新聞社が取り上げるほどの注目度となっており、それを見た出版社が書籍化したいと相談を受けたほどである。
ミーハーな要素は必要なく、今のクオリティーを保ちながら今後の活動にも注目していきたい。ただ、少し残念なのは、グランドオープ二ングしたにも関わらず、全施設がオープンしておらず、HPやFacebook等で確認しないといつどこで何がやっているか分からないという点である。さらに、クラブに関しては既存のKater Bleuのみで、それ以外は不定期で野外スペースでイベントが開催されているだけである。
訪れる際は是非ともオフィシャルサイトを事前にチェックして欲しい。レストランなどの撮影も禁止されているためマナーにも要注意。
*この記事はグランドオープニング時の特別なものになり、通常営業とは異なります