【キャリアパスと仕事のやりがいは?】「エンフォルド」「ナゴンスタンス」青木綾音さん ディレクターの思いをぶらさず表現

2025/10/17 05:30 更新


バロックジャパンリミテッド 「エンフォルド」「ナゴンスタンス」プレス 青木綾音さん

 アパレル業界の花形とされ、憧れの職として挙げられることも多いMDとプレス。華やかな印象が強い一方で、市場の分析力や企画力、コミュニケーション能力など、様々なスキルが求められ、売り上げとブランドイメージを左右する重要なポジションだ。どんなキャリアパスを歩んできたか。実際の仕事内容ややりがいとともに話を聞いた。

 5月からバロックジャパンリミテッドの「エンフォルド」と「ナゴンスタンス」のプレスに就任した青木綾音さん。同ブランドのCGチームで働いた経験を生かし、シーズンコンセプトや商品の魅力を社外に発信する仕事をしている。「社内外から頼られるプレスになって、ブランドの魅力をもっと伝えたい」と語る。

 服飾専門学校でパターンを専攻したが、「ゼロから服を作るより、自分は商品の魅力を発信する仕事に興味がある」と学生時代に考えた。就職活動ではSNSの発信力が強いバロックジャパンリミテッドを選んだ。

 22年に総合職として新卒入社。服飾専門学校時代に並行してグラフィックデザインも学んでいたため、店舗研修を経て、23年にエンフォルドとナゴンスタンスのCGチーム配属となった。

撮影まで社内で完結

 2ブランドは約30人のチームで運営している。オフィスは本社ビルではなく、ショールームと撮影スタジオが併設する別棟だ。「小さな会社のようで、距離が近いのが良いところ」と青木さん。

 毎シーズンのテーマを表現するビジュアル制作に力を入れるエンフォルドとナゴンスタンスだが、撮影や編集などの業務は外部に委託せず、社内で完結している。クリエイティブディレクターの植田みずき氏のイメージを「最も近い場所で聞いている社員が、ぶれなく形にする」ためだ。

 青木さんはCGチームのグラフィックデザイナーとして、ビジュアル画像の加工や編集、ロゴ制作などを担当してきた。

 エンフォルドが「オーケストラ」をテーマに掲げた25年秋のビジュアルでは、衣装を着た大勢のモデルが楽器を持って演奏しているような写真を作った。実際に起用したモデルは2人だけだが、撮影後にCGで大人数に見せるよう編集した。必要に合わせて大道具を作ったり、野外の撮影場所を探すこともあり、「大変なことも多いけれど、作品が完成したときの感動がやりがいになっている」。

エンフォルドの25年秋のビジュアルは2人のモデルをCGで大人数のように編集した

CGの経験生かす

 5月にプレスに異動した。推薦した長谷川裕美PRマネージャーは「ブランドの世界を理解し、CGチームで制作の現場を経験してきた彼女だからこそ即戦力になれる」と期待する。

 エンフォルドとナゴンスタンス2ブランドのプレス業務は3人で兼務する。撮影の進行やスケジュール調整、雑誌やタレントへの商品の貸し出し、SNS運用などが主な仕事だ。今年からナゴンスタンスはランウェーショーも開催しているため、その進行も任されている。

 パソコン作業が中心だったCGの仕事と比べ、プレスは社外の人と接する機会が増えた。「ヘアメイクやスタイリスト、雑誌の編集など、様々な分野のプロと関わるのは緊張もするが、ブランドを代表してきちんと考えを伝えなければならない時もある」。メールや対面での対応の仕方は先輩を見て学ぶ日々が続く。植田ディレクターにも自分から直接、分からないことを聞いて確認するように心掛けているという。

 青木さんはグラフィックデザイナーの経験を生かし、社外向けの商品説明資料の制作を手掛けることが多い。文字配置や図表の見せ方を工夫し、より伝わりやすい資料作りを意識している。

 「2ブランドとも大人女性の悩みに応えるシルエットやデザインに一つひとつこだわっていて、履くとシルエットのきれいさに感動する」。プレスの立場を生かして、商品の魅力をより多くの人に伝えていきたいと考えている。「そのために細やかな配慮やコミュニケーションを意識し、社内外に頼られる存在になりたい」と語る。

(繊研新聞本紙25年10月17日付)

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