廃棄繊維を色で分別して衣料や文具などにアップサイクルするのが「カラーリサイクルシステム」(CRS)だ。素材ごとに分ける必要がない利点が大きい。約10年前に京都工芸繊維大学の木村照夫名誉教授と博士課程に在籍していたテキスタイルデザイナーの内丸もと子さん、素材メーカー、廃棄衣料回収企業、成型加工業者などで構成する産官学チーム「カラーリサイクルネットワーク」で研究を始めた。試行錯誤を経て技術的課題を解決し、販売にもこぎつけた。「この研究成果をさらに広く世の中に役立てたい」と内丸さんが19年、カラーループ(京都市)を設立し、CEO(最高経営責任者)として活動を本格化した。廃棄衣料が社会問題になるなか、様々なプロジェクトが進んでいる。
(山田太志)
使うのは、在庫となり廃棄予定の衣料や中古衣料店で売れ残った衣料、生産時の端材。これらを、赤、黄、青、デニム系など色で分別・開繊後、繊維自体を色材としてカラフルなフェルトや糸のほか、樹脂と混ぜたFRP(繊維強化プラスチック)のシートやブロック状にして、文具や雑貨などに再利用する。
色相を数値化
ごく一部の熱に弱い繊維では、成形加工時の工夫が要るが、基本的に単一繊維、複合繊維を問わず、多様な衣料を再利用でき、アップサイクルして新たな価値を生み出せる点が大きなメリットだ。わたや紡績糸への再利用も、技術的にはクリアしている。ただ、コストや紡績スペースの確保が課題で、現時点では繊維と樹脂を混ぜたFRP製品が中心。求められる強度に応じて、樹脂と繊維との複合率が決まる。
内丸さんは、CRSの全体構想を推進、誰でも分かるように色相を数値化して目視で分別できるシステムを構築。さらにテキスタイルデザイナーとして用途に応じた独特の色や質感の出し方で役割を果たしてきた。カラーループ設立後は、持ち込まれる様々なプロジェクトを具体化する窓口機能や広報活動にも力を入れている。
協業や輸出も
製品化しているのは現在、トートバッグやサコッシュ、ペンケース、手帳カバー、マグネットバー、定規、フラワーポッド、フェルト、ペーパー、コースターなど。デッドストック衣料をアップサイクルするアーバンリサーチのブランド「コンポスト」で18年から協業して雑貨を広げたほか、昨秋には阪急うめだ本店でオリジナル文具などを期間限定で販売した。コロナ下で活動の制約も多いが、今年は有力ファッション関連企業や文具メーカーでの採用も進む見込み。中小クリエイターや制服関連、自動車内装材などの問い合わせも増加し、一部海外輸出も始まった。「起業時は悩んだが、ようやくここまできた。一企業の専有物にせず、研究成果を広く社会に広げたい」と内丸さん。
課題は、ペンケースで約3000円になるコストと生産基盤の整備。廃棄繊維を活用する社会的意義などを訴え、認知度向上と販売量の拡大を目指す。回収や成形、紡績の場所が分断されているため、「できるだけ地産地消の形を取り、1カ所で生産できるのが夢」という。
(繊研新聞本紙21年1月29日付)