商品の魅力とともに、客の満足度や引き付ける体験価値が大切になっている。店頭との連動やコミュニケーションを深め、一緒になってファン獲得を支えている部署が奮闘している。利便性向上やニーズへの対応は店頭だけではできない。客に喜ばれることを原動力に、企業を支えている。
熱量を伝えて社内外と連携
スポーツチェーン店への営業やリテール部門のエリアマネージャーなどを経て、25年4月に「デサント」ブランドの店舗プロモーション全般を担う現職に就いた。主な業務は①新規・改装店の開業イベントの企画・運営②顧客向けイベントの立案・運営③POP(店頭広告)やショッパー、外看板の製作――など多岐にわたる。同社はDtoC(メーカー直販)を強化しており、こうした業務を専門に手掛ける部署は「小売りに必要な機能」として近年設けた。
一貫性を重視
儀保さんが仕事を進めるうえで意識しているのは、パフォーマンススポーツブランドとしての一貫性。どんな企画でも、スキーやランニングなどブランドの根幹にあたるアクティビティーからイメージを膨らませるようにしている。
例えば25年11月に開業した路面店「デサント神戸」の顧客向けオープニングイベントでは、ヨーロッパのスキーリゾートで親しまれているアプレスキー(スキーやスノーボードを滑り終えた後に仲間と食事や音楽を楽しむ)を疑似体験できる空間を作った。神戸出身の人気DJ・トーフビーズさんを招いたほか、ミラーボールを入れてその光で雪を演出。当日は約100人が来場し、大いに盛り上がった。会場を訪れたディベロッパー関係者からは、「自施設でオープンする際は、こうしたイベントを開催してほしい」と要望され、手応えを得た。
儀保さんはデサントジャパンとして初めて挑むプロジェクトに関わることもある。例年、5、6月に卸先のスポーツ店が主催するスキーウェアの早期受注会に参加し、その会場でオーダーを受けていたが、DtoC推進の一環で26年からは直営店5店と東京オフィス、公式オンラインストアで受けることにした。当然集客は自前で取り組まなければならないうえ、スキーの担当部署と複数店舗の連携も必要となる。それら業務を儀保さんが引き受け、奔走した。

特に注力したのは集客。社内のデジタル担当の部署と相談しながら製作したLP(ランディングページ)は、来場する選手や商品の詳細など順番と分かりやすさを意識して何度も修正と追加を重ねた。
そうした業務と並行しながら業務オペレーションのマニュアルや受注会当日の段取りなどを作成。スキーウェアの接客販売に不慣れなスタッフもいたため、研修プログラムも組んだ。
準備を含め数カ月にわたるプロジェクトだったが、苦労のかいあって初開催ながら反響は大きく、受注会全体で予算を65%超過。初めて企画したレーシングスーツのオーダーは想定の4倍の注文が入った。
とはいえ失敗も。東京オフィスで開いた受注会では選手3人を呼んだトークショーを目玉コンテンツとしたが、客の中にはステージ企画そっちのけで商品を見る人がいて、会場が少し混乱してしまった。儀保さんは「トークショー中はお客様全員が注目するだろうと判断し、ステージとサンプルの陳列スペースを近くしたレイアウトにしていたが、安易な思い込みだった」と反省する。
できるだけ対面で
業務ではとにかく社内外の人と交渉・折衝することが多い。相談を持ち掛けるときはできるだけ対面で話すことを心掛けている。面と向かってやり取りすることで、相手に「熱量が伝わる」からだ。
9月には外国人客でにぎわう路面店「デサントゴルフコンプレックス銀座」のリニューアル開業を予定しており、直近ではこの成功が最大のミッション。「今後デサントは直営店が増え、お客様との接点はさらに増える。デサントのファンになってもらうには、単にイベントを開催するのではなく、ブランドの本質的な魅力を伝えられるものを広く発信する必要がある」と儀保さんは意気込む。
(繊研新聞本紙26年8月19日付)
