久しぶりに海外出張でシンガポールを旅した。日本の出国は顔認証。旅の記録としていたパスポートへのスタンプも押さなくなっていた。入国の空港でも顔認証に指紋、パスポートをデジタルで読み取りして完了。慣れれば実に楽だ。
デジタル化が加速
観光メディアに特化したネットワーキングイベントへの参加が目的だったが、事前に専用のサイトに登録すれば自分のプロフィルや過去の執筆記事などのリンクを張り付けることができ、アポイントを取っている相手側の情報も見られた。イベントでは15分刻みで数十件の企業と商談をするという怒涛(どとう)のスケジュールだったが、相互のデータをチェック済みなので簡単にあいさつを交わした後は本題に入れるので、短い時間でも充実した情報交換が可能だった。数年前までは紙のプレスキットやUSBを配るのが主流だったが、今回はQRコードを提示され、「画像、資料など全部入っているからよろしく!」と担当者。名刺交換もデジタル名刺が主流で、ペーパーレス&デジタル化がすでに世界基準になっているのだということを痛感した。
社会生活に普及
日本で是か非か話題になっているライドシェアも、すでに社会生活の中に組み込まれていると感じた。新型コロナが拡大する以前からすでに世界の主要都市ではライドシェアが地元民や観光客の足になりつつあったが、今回はより公共交通として定着しているように感じた。ホテルのフロントでタクシーを頼んだら、スタッフは携帯で、東南アジアで最も利用されているライドシェア「Grab」(グラブ)にアクセスして配車をしてくれた。ホテルの広報も「料金が事前にわかるライドシェアのほうがお薦めです」とキッパリ。実際、グラブを何度か使ったが、運転は丁寧だし、車内も清潔。予約する際にルートやおおよその所要時間、料金も可視化できるので安心感がある。言葉が通じなくても問題なく目的地に乗り付けてくれる。
日本では専門性の高い二種免許取得が必要なタクシーと比較して安心安全面で不安視する声があるが、まずはインバウンド(訪日外国人)であふれている観光地や、公共交通機関がカバーしていない地方・過疎地域などで特例として解禁してもいいのではないだろうか。机上の議論ではなく、試験的に導入してメリット・デメリットを見極めることが建設的。もちろんタクシーという選択も残すべきだ。デジタル化と共に交通の利便性と安全性が担保される、よりベターなサービスを期待している。
(トラベルジャーナリスト・寺田直子)