EC担当の方々とお話しすると、口を揃えて出てくる不満の一つに「社内でECの業務が理解されていない」というものがあります。過去店舗を主軸に業務をされていた方々からすると、あまりにも業務内容に乖離(かいり)があり、誤解されているものが非常に多いと感じます。いくつか例を挙げてみましょう。
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仕事が理解されない
まずは「売り上げを作るのが簡単」だと思われることが多く、また作業内容についても「すぐ完了する」と勘違いされやすい、のが代表的でしょうか。ECサイトの更新作業に必要な画像の加工や商品アップロードの際のCSVの編集、注文が入った後の一連の作業などなど、意外と地味で泥臭く、日々の細かい改善が必要になる事が多いのですが、そのいずれの作業も瞬時に終わると勘違いされ、工数への理解がないせいで評価されにくいこともあります。
作業を効率化するサービスの導入や、EC運用に欠かせない機能の実装も、費用対効果を理解してもらえず、会社から決済してもらえない。EC業界では必須と思われるものでも、上層部に理解してもらえず機能がアップデートされないまま、レガシーな構成で運用せざるを得ないショップは珍しくありません。
他にも「EC比率をどう高めていくか?」などの目標を掲げるケースもあるようですが、EC比率を高めたいのでしたら店舗を閉めれば実現してしまうので、EC側からすると無意味な目標設定です。ウェブメディアに掲載されるPR記事を読み、内容を理解しないまま「必要なサービス」と勘違いされ、現場の意見に沿わないものが導入されることもあるでしょう。それで利益率が下がり、現場の評価も下がってしまうなら害悪以外の何物でもないでしょう。
経験してみたら?
アパレル業界では、現場を知ることを目的として店頭での研修期間を設けている企業が多数存在します。本部勤務の方でも数週間程度、販売現場を経験する事で現場の業務やエンドユーザーの理解が進むのは、どのセクションに配属されても役に立つ経験です。
これだけECの導入が一般的になってきているにも関わらず、EC部隊へのOJTの事例が業界内であまり聞こえてきません。売り上げをアップさせるのが簡単・作業はすぐ終わると思っているのでしたら、一度やってみれば良いのです。
どれだけ幅広い知見が必要になるか、どれだけ面倒な作業が多いか、どれだけ他部署から業務が理解されていないか、その乖離に組織全体で気づいた時、社内のEC運用は一段階アップデートされることでしょう。怪しいサービスやコンサルタントの営業から自衛できるという副産物までセットです。まずは上層部の方々が、率先してECの業務を簡単にご経験される事を切に願っております。
(ECディレクター・深地雅也)
【連載】「EC」常識の非常識