「新たなテニスカルチャーを創りたい」とリブランディングした「エレッセ」(ゴールドウインが製造・販売)。20年夏に渋谷のレイヤードミヤシタパークへ出店した新コンセプトによる単独直営店「エレッセ・トーキョー」を拠点に新たなブランドの姿を若い世代に向け発信している。
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「この間、テニスマーケットの縮小が加速する中でも従来型のマーケットイン発想でコアなファンの意見だけを吸い上げてきたため、顧客の高齢化が進んだ。しかし、プレー人口は減っておらず、ソフトテニスはナンバーワン部活動の地位を占め、潜在的なニーズは大きい」(今瀧俊輔第二事業本部エレッセ事業部長兼事業グループマネージャー)とみている。従来のイメージを払拭(ふっしょく)するため、既存のテニスショップや百貨店スポーツ売り場のインショップをやめて新コンセプトのエレッセ・トーキョーに集中した。
まずテニスの楽しさを知ってもらうとともに歴史や精神の掘り起こしに着手した。元々ロイヤルスポーツとして始まったテニスだが、70年代に大きな変革があり、男女平等を徹底するまれなスポーツ。現代のLGBT(性的少数者)にも通じる。年齢層も広く、生涯スポーツとして長く楽しめる。基本的に男女の賞金は同じでジュニアや車いす部門も全て一緒の大会として開催する。こうした背景も理解しつつ、今後、LGBTをテーマに多様な仲間で楽しめる新シリーズも計画している。
商品開発でもテニスの機能性は根底にある。さらにエレッセの創業者であるイタリアのレオナルド・サルバディオ氏の「勝負でなくプレーを楽しむマインド」や機能美の考え方さらには当時、白だけのテニスウェアの世界に色を持ち込んだチャレンジ精神も受け継いでいる。例えば、優れた紫外線対策や吸汗速乾性、四肢の動かしやすさなどのテニスならではの機能を普段着に落とし込んでいる。また、従来の決まりきった色にカーキやベージュを新色として取り入れ、ヒットにつながった。現在、一押しなのが90年代に大ヒットしたウインドアップスとカジュアルウェアとのミックスコーディネート。テニスをオリジンとした機能性にファッション性を加え、シリーズ化している。
外部から起用されたブランドディレクターを務める阿久津誠治氏(メンズブランド「ナーディーズ」「エフィレボル」を運営)は「固定観念を取り払うことも重要。女性用のテニススコートを新しいトレーニングスタイルとして、ジムで着用してもいいし、80年代のテニスシューズを復刻しストリートウェアと合わせても面白い。外からの視点も大切で、プレー以外でテニスカルチャーの楽しみ方を作り上げ、コミュニティーに入るハードルを下げたい」と強調する。
渋谷のエレッセ・トーキョーはブランドのこれからの方向性を表現する場として、さらに進化し続けている。