【FB革命前夜 未来を作る⑥】人とテクノロジー

2018/02/12 11:00 更新


求められる人材が変わる

 ファッションビジネス業界はデジタル技術に詳しい人材が不足している。商社でさえ「テック系の人材の獲得はなかなか難しい」。外部の優秀な人材・企業との連携が大切になるが、社内のIT(情報技術)リテラシー(理解力や活用能力)を高めなければ、それもおぼつかない。

主役が交代

 「今まで主役だったクリエイティブディレクターやマーチャンダイザーといった職種ではなく、今後はデジタルスキルを駆使してビジネスを推進できる人材が求められている。デジタルマーケティングはもちろん、ECの知識も兼ね備えた人材、データ分析スキル、リサーチ能力、データサイエンスの能力が重宝される」(ジャパンイマジネーション)。

 ECの拡大、AI(人工知能)の活用が進むと、集積するデータは膨大になる。とはいえ、データを利用して判断するのは人だ。例えば、今後、重要性が増す職種として挙がるのが、データを分析し、意思決定者が合理的な判断を行えるようにサポートする、データサイエンティスト。

 しかし、規模や資金力で他産業に劣るファッション企業が自前で採用し、育成するのは難しい。必然的に外部との連携を模索することになるが、何を依頼するのか、自分たちがデジタルで何をするのかを明確にする必要がある。そのためにはテクノロジーの進化を理解し、学ぶ姿勢が求められる。

アーリーアダプターへ

 注目したいのが、スタンフォード大学の社会学者、エベレット・ロジャーズ教授が提唱した「イノベーター理論」だ。商品購入の態度を早い順に五つに分類した場合、冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用するイノベーター(革新者)は全体の2.5%。流行に敏感で情報収集を自ら行い、判断する人だ。いわゆるアーリーアダプター(初期採用者)が13.5%。以下、比較的慎重派だが、平均より早く新しいものを取り入れるアーリーマジョリティー(前期追随者)が34%。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をするレイトマジョリティー(後期追随者)が34%。最も保守的なラガード(遅滞者)が16%という比率になる。

 これはイノベーターとアーリーアダプターの合計16%に新商品が普及すれば、それ以降は急速に市場が拡大するという理論。これを、ファッションビジネスにおけるテクノロジー導入の面から捉え直すと面白い。イノベーターになるのは資質の問題もあって難しいが、せめてアーリーアダプターになるのはどうだろうか。

 流行に敏感で、自ら情報収集し、判断する人という定義はファッションビジネスで働く人々にとって親和性が高い。この間のファッションビジネスの低迷は、世の中の動きに鈍感で、変わることを敬遠した結果だったとは言えないだろうか。




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