《ファッションビジネス革命前夜》サブスクリプションが増加中 アパレルも参入 変わる消費者との関係性
サブスクリプション(購入せず利用期間などに応じて料金を支払うもの)のファッションレンタルサービスが増えている。IT企業発が多かったが、今春にはAOKIやレナウンなどアパレルの参入が目立つ。事業化を検討している大手の小売りやアパレルもある。消費者の選択肢の一つにレンタルが加わることで、ファッション企業にとっては開拓できていなかった新客に接近するチャンス。消費者は新しいファッションに挑戦しやすくなるため、商品の同質化が改善される可能性もある。
(藤川友樹)
サブスクリプションは大きく2種類。消費者自身が利用したいアイテムを注文する「選択型」か、事業者が消費者一人ひとりに合わせて商品を送る「提案型」に分かれる。多くがオプションで借りたアイテムを何度でも交換できる借り放題の仕組みを採用している。
いずれもファッションに興味があるが、優先順位は低く、これまで頻繁に購入していない「店やEC、オムニチャネルでも接点のなかった客」にアプローチできるのが特徴。働く女性やママなど、限られた時間を有効活用する必要があり、店で試着したり無数の商品から比較購買することが面倒と感じている客層だ。不満があったり、飽きたら返却すればいいから、レンタルは購入より気軽で、時間を節約できる利便性が支持されている。
ストライプインターナショナルのメチャカリは既存顧客の利用は3割程度で、新規が7割を占める。スタイリストが客に合わせて商品を選ぶエアークローゼットは、自社でセレクトショップなどから仕入れているが「これまで関心を持たれていなかったブランドでも、スタイリストのフィルターを通じて、必ず袖を通してもらえる」とアパレルと消費者の新たな出会いの場にもなっているという。また、ラクサスやカリトケは、100万円近くするアイテムをレンタルできるため、「買う前に価値を実感したい」というエントリー層の需要もある。
先行しているサービスの利用実態から、〝売れる〟商品が必ずしも借りられるのではないことも見えてきた。メチャカリは「冬の白いコートなど、汚れを気にする必要があるアイテムが多く借りられる」。ラクサスは「レンタルでは本当に気に入ったデザインのアイテムを利用できるため、派手、奇抜なものも良い」という。店やECで購入する際は、本当は欲しいデザインの商品ではなく、使い勝手や汎用性を考えて妥協する消費者も多い。レンタルサービスが普及すれば新しいファッションに挑戦する敷居が低くなり、新進ブランドなどの活路も広がりそうだ。
エアークローゼットはアイテムの返却時にユーザーがスタイリストに商品の感想をフィードバックする機能があるため、商品に対して買わない、着たくない理由などのネガティブなデータも収集できるようになった。同社ではデータサイエンティストの採用活動を積極化し、メチャカリでも「データをどう収集してどう活用するのか、新しい形で客との関係性を築ける可能性がある」という。
とはいえ、ビジネスモデルとして確立するには時間がかかる。発送、返却、クリーニング(修理)、保管といったECより複雑なオペーレーションの構築も必要になる。有料会員数が一定規模に膨らみ、その継続率が高ければLTV(顧客生涯価値)も高くなるが、現状は新規会員の獲得が課題だ。ラクサスやカリトケなどは商業施設への出店、エアークローゼットはスタイリングを体験できるリアル店の開設、メチャカリはテレビCMなどで露出を増やしている。
継続利用してもらうためには、順次サービスをアップデートして顧客満足を高めることも欠かせない。ミレニアル世代を中心に消費者の価値観が所有から共有(シェアリング)へと変化するなかで、サービスが浸透し、拡大するのかが注目される。