国際ファッション専門職大学 平井秀樹さん 教育でより良い未来の創出を【ファッションとサステイナビリティー】

2025/02/28 05:29 更新


国際ファッション専門職大学 国際ファッション学部教授 平井秀樹さん

 皮革産業の環境問題を題材に、産学連携授業で商品開発に取り組んでいる。産業界の環境問題解決の視点で目指す教育について聞いた。

 21年から3年生の産学連携インターンシップで、皮革産業で問題となっていた傷などが多いため使われず在庫となっている〝D級レザー〟の活用に取り組んできました。学生の既成概念にとらわれない発想と、産業界のプロのスキルを融合したPBL(課題解決型授業)を実施。D級レザーと家具の製造過程で出る端材を使い、帽子のような形の「ハットランプ」を作りました。追加生産するなど好評で、コンセプトや取り組みが社会に受け入れられました。

 現在は害獣として駆除された野生の鹿革が廃棄されている問題に着目。〝ソーシャルレザー〟プロジェクトの名称で、江戸時代の火消しのはんてんを鹿革で作りました。3月末に学内の成果発表会、4月に都内の合同展示会で現代ファッションとして提案する予定です。

 私が教えたいのは、産業界の環境問題解決の観点から、新たな製品やサービスを開発し、社会で実装する力。開発で社会が良くなり、人々の暮らしが豊かになり、幸せになれるという視点を常に基軸にしています。

 私は当校の開学に合わせ、19年にワールドから教員として転身しました。実務家教員はビジネスの現場での長年の経験やスキルがあるため、予想外の発想を受け付けず古い考え方に陥りがち。自分も含め、変わらなければと感じています。一方、今の学生は環境問題への関心も高く思考も柔軟で、我々よりもっと先を見ている。大量生産、大量消費、大量廃棄が問題視され、環境汚染産業と言われても、ファッション業界に入って変革を起こしたいと高い志を持ち、当校に入学する多くの学生がいることを忘れてはなりません。

 これからは人々を幸せにし、ファッションの可能性を広げつつ、生態系も保全する資源循環経済(極小生産、適小消費、無廃棄)の実現が必要です。より良い未来を創出する技術や変革を生み出すには、教育を提供する側も、どんな技術やスキルが必要なのか定義が必要。基本を教えた上で今後、必要になるのは21世紀以降のデジタル時代で求められるスキルや思考力、それを社会で実装できる力をつけるための新たなカリキュラムの開発です。

 学内で教育に関する共同研究を立ち上げ、外部の研究所と提携して最先端技術を題材に、社会実装のためのPBLを行う予定です。そこで得た知見を基に本学独自の最先端の教育カリキュラムを開発し、メソッド化して学生に提供したい。

 将来の予測が困難な時代のやっかいな問題に挑み、作りたい未来を構想し言語化します。他者と共創しながら製品やサービスを社会実装し、変革を起こせるカリキュラムと学びの場を提供して、社会変革を担う人材育成を支援していきたいです。

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(繊研新聞本紙25年2月28日付)

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