〝オムニチャネル〟〝デジタルトランスフォーメーション〟〝ニューリテール〟といった、ITを活用した新たな小売業の議論と試行が、国内ファッション産業でも活発になってきた。小売業では今年、「アナログ(店舗・人)とデジタル(EC・ITやオートメーションツール)の融合」の施策が進み、店頭が活気づくという兆しが表れた。特に、実店舗に入った客の行動のデータ化は、客の真の姿の理解を進める。
また、販売スタッフのEC売り上げへの貢献が数値化できるツールは、労働力不足が深刻化する中で、スタッフの承認欲求やファッション産業で働く意欲を満たし始めた。こうしたアナログとデジタルの両接点で深くつながる顧客のビッグデータは、今後のワン・ツー・ワンマーケティングの精度向上に期待できる。また、その分析データはオンデマンド生産、生産数量の最適予測への活用へと、川上~川下のサプライチェーン変革に波及しそうだ。ビジネスモデルを柔軟に変える姿勢も必要になってくる。来年、通信インフラがより高速化した5G(第5世代移動通信システム)に変わる。IoT(モノのインターネット)も進み、高速な商品生産、仮想接客販売の議論も浮上してきた。リアルとバーチャルの融合が目前に迫る今、未来のファッション産業の扉をたたいてみる。
(疋田優)
この10年、世界全体でデジタル投資に比重が置かれてきた。ファッションビジネスでは、ECシステム、全販路の在庫一元、顧客情報の一元管理、MA(マーケティングオートメーション)などIT企業化を志向する流れが強かった。しかし3、4年前にECと店をつなぐアプリの導入が活発になると、様相は変化。アプリを使って客が実店舗に足を運ぶようになり「客がどの販路で買ってもよく、店とECはシームレスな関係」という成長戦略に変わった。
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