90年代後半から00年代にかけて、本紙にストリートスナップの記事をたびたび掲載していました。30年近く前の、都会の一瞬を切り取っただけの記事ではありますが、その背景を店や企業に取材し、ときには売り上げなどの数字も入れていて、当時の商売の動きも少しわかります。“平成リバイバル”など様々なレトロが注目を集めている昨今、改めて読み返すことで、ビジネスに通じるヒントが見えてくるかもしれません。ベテラン記者が振り返ります。
※本文は読みやすく直しています。社名やブランド名などは原文のまま掲載します。
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メガヒットするGジャン 花柄の膝丈スカートにヒールサンダル合わせて
2000年3月29日付
Gジャンがストリートにあふれている。春のストリートファッションの主流は、Gジャンと花柄の膝丈スカートにヒールサンダルの組み合わせ。渋谷のセクシー系ギャルも原宿の女の子たちもエレガンス系OLも、誰もがGジャンを着ている。昨年からのヒットアイテムなのに、メーカーやショップは未購買層と2着目需要を狙って「ゴールデンウィーク直前までいける」と超強気。異常なほどのメガヒットアイテムになっている。
これほどGジャンが広がったのは、ヤングだけでなくキャリア、ミセス層にも売れているからだ。「Gジャンしか売れていない、というのが実感」というのは「ナチュラルビューティ・ベーシック」(サンエー・インターナショナル)。OLに人気の「クードシャンス」(ワールド)でも1月終わりごろから急激に売れ出し、まだ上り坂という。「この春の着こなしのベースアイテムになっている」とMD担当者。ストレッチデニムで、ステッチはベージュとピンクがある。3月第3週はその前週の1.8倍(着数)を売り上げた。ブランド全体で7500着を発注していて、「まだまだ行けると読んでいる」。
ヒラヒラの膝丈スカートとニットのトップがヒットしていることも、Gジャン現象に拍車をかけている。スカートの柄を見せられるし、今の気分としては絶妙のバランス。Gジャン自体もタイトなシルエットにできていてカフス裏が花柄やチェックの布だったり、身頃に切り替えがなくフラットだったり、スカートに合う作りになっている。
渋谷セクシー系ではGジャンを着てGジャンを買って行く女の子が多い。2着目、3着目はカラーものが好調に売れている。ショップのカパルアではピンク、ターコイズ、ベージュ、オレンジ、パープルの5色でピンクが1位、パープルが2位。エゴイストで買った女の子の袋の中はホワイトデニムのGジャン。セシルマクビーでもピンクが売れている。一段落したら、昨年も売れたインディゴのモンキーウオッシュタイプをもう1度仕掛けるという。ただし、「これだけ売れると〝突然死〟の時期の判断がカギ。ゴールデンウィークの直前でアウト、というところかな」(セシルマクビー)。
原宿系のヤングブランドでは昨年の10倍も生産したところもあり、素材確保に奔走したという。
価格はほとんどのブランドが1万円台後半で、セクシー系ショップは8900円が中心だ。2900円のユニクロを着ている女の子も多い。
《記者メモ》
石を投げれば当たりそう、の表現がぴったりなほどの大ヒットでした。業界の知人たちも「どうなってるの?」とざわざわ。当時は街が今のSNSの役割だったのですね。
(赤間りか)