文豪ヘミングウェイへの思いを服に

2015/03/21 07:58 更新


 米国の文豪ヘミングウェイへのオマージュを込めたメンズブランド「モヒート」(ファイブ・ポイント、電話03・5604・5905)は、立ち上げから5年。コンセプトをぶらすことなく限られた卸し先で地道なファン作りを続けている。

 デザインする山下裕文代表は20代のころ、原宿のアメカジショップ「プロペラ」で経験を積み、その後セレクトショップの立ち上げに参加。ラグジュアリーブランドやショップの運営などのコンサルティングも行ってきた。デビューとなった11年春夏物はショーツに特化して企画。

「ヘミングウェイのライフスタイルに焦点を当てたブランドの濃さを重視」しており、シーズンごとに少しずつアイテムを広げてきた。15~16年秋冬物は小説「兵士の故郷」の主人公から発想した、ウール・カシミヤのダッフルとピーコートを融合したようなボリューム感のあるコート(7万9000円)を出す。また、写真家ロバート・キャパとヘミングウェイがスペイン戦争に参加した当時のミリタリーアウターをモチーフにした「シンサレート」中わた入りのショートブルゾン(4万6000円)、旅を意識したポリエステル100%で丸洗い可能なツイードジャケットなどを揃える。

 「大人向けカジュアルウエアなので、トレンドを追いかけたり、毎シーズン企画をころころ変えたりしない。定番品をバージョンアップし続けることが大切」(山下代表)としている。例えば、短編小説「殺し屋」の登場人物が着用していたコートをアレンジした「アルズコート」(5万8000円)は、1人で7着購入したヘビーユーザーがいる。あるいは、当初から継続する「アブサンシャツ」も、1人でコレクター的に12枚購入した顧客もいた。新しいものを次々と提案するよりも、同じものを作り続けて完成度を高める方が、購買意欲を刺激するには難しい作業かもしれない。だが、「ヘミングウェイという物差しから外れないことはブランドの信頼にもつながる」と強調する。

 卸し先は安易に広げず、現在は大手セレクトショップのほか、全国の有力専門店など16~17店。5年間で個店によっては1品当たりの発注量が数倍に増えたところもあるという。海外では韓国のセレクトショップ数店にも卸している。

 今春は同郷の熊本県出身のデザイナー、草野健一氏のメンズブランド「ケネスフィールド」とモヒートで、名古屋のラシック1階で31日まで期間限定ショップを開設する。20~22日には2人が店頭で接客もする。「卸し先がないエリアでの新たなファン作りに挑戦する」(山下代表)としている。

ファイブ・ポイント山下代表
ファイブ・ポイント山下代表


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