ジュエラーメゾンが今夏、パリや各地で新作ハイジュエリーを発表した。自然や時間の概念を、伝統と革新の技が織りなすクリエイションで、それぞれの美学を繊細に、巧みに表現した。
(パリ=松井孝予通信員、シャネルとタサキは中村唯)
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ブシュロン
自然の姿を忠実に映しとる
クレール・ショワンヌによる「ブシュロン」の新作は、消えゆく自然の一瞬を、白と黒のハイジュエリーのコンポジションで表現した。生け花と「侘(わ)び寂」の思想を手がかりに、昆虫を添えた野生の草花による六つのブーケは、リアルなスケールの身にまとう22点のアートピースで構成され、静謐(せいひつ)な彫刻のようにたたずむ。3Dプリントによるバイオ素材のアザミ2輪には、職人が独自に開発したクチュールセッティングで計800石のダイヤモンドが一つひとつ縫い留められ、自然の姿を驚くほど忠実に映しとっている。ポピーは、光を吸収するベンタブラックの加工による純粋な黒の花弁で、生命の終わりを静かに描く。コレクション制作には、延べ18000時間超を要した。
