すべてが揃ったカフェの誕生(宮沢香奈)

2016/05/21 10:59 更新




ツアーを終えたあるアーティストのインタビューをするため、ベルリンらしい場所を探していたところ、全くベルリンらしくない、むしろリゾート地にありそうなステキなカフェを発見した。しかも近所で。

私の住むウェディング地区は、オシャレでちょっとハイソなミッテにもメインのテーゲル空港にも近いが、”トルコ人街”と呼ばれている移民エリアである。ケバブ屋とハンバーガー屋がやたらと多く、常に混んでいる。

近所には、スーパー、公園、銀行、薬局、ドラッグストア、ファーストフード、図書館など何でも揃っていてとても便利なので、住むには最適の場所だと思っている。


 

 

残念なのは、若いアーティストが多く住んでいるはずのエリアなのに全く洗練されないところである。

オシャレなカフェやショップがいくつも点在し、今最もホットなエリアとされているノイケルンももとは同じく移民エリアだった。その次に来るのがウェディングだと言われていたのに、もう何年も”アップカミング保留”状態である。

 

 

そんなウェディングに登場したのが「Moos Restaurant」である。もともと火葬場だったところをコンサートやワークショップを行うためのイベントスペース「Silent green」に改装され、様々な形で利用されている。その敷地内にあるのが「Moos Restaurant」である。

メルヘンな赤レンガの建物自体火葬場には見えず、誰かが住んでいた”お屋敷”といった感じで、とても風情がある。ドイツはこういった古い建物を全く違う用途で使えるようにするリノベーションアイデアが天才的だと思う。世界的に有名なローカルクラブの多くもそうである。

 


 

カフェは外のオープンスペースが特にオススメで、センターに置かれた重厚なロングダイニングテーブルやファーのラグ、テーブルセットのセンスと配置が完璧。森林から木漏れ日が差し込み、心地よい風が吹いてくる最高のロケーションは、優雅な気分で食事を楽しむことができ、すぐ横が墓地でも全く気にならない。

これは、ヨーロッパならではなのかもしれないが、墓地自体が怖いどころか思わず写真を撮りたくなるような美しい景色になっているのだ。

2階に位置する店内もガラス張りで明るく、天井から吊るされたオレンジの照明とウッドテーブルがとてもステキな内装である。大通りから離れた静かな場所で、緑も豊富にあり、目に入るもの全てが美しい、そんな完璧なまでのロケーションは平地も自然も豊かなベルリンにおいてもなかなかない。

 


 

フードはドイツらしいヴィーガンメニューのみで、ランチタイムとティータイムがメインとなるため、サラダやパン、ケーキなど軽めの物が多い。アルコール類も取り扱っており、金曜など一部の曜日は夜も営業している。

同じ敷地内にはギャラリーも併設されており、天気の良い休日に散歩も兼ねて訪れるには最高の場所である。

住み慣れた街の景色が一気に変わってしまうのは寂しいけれど、ウェディング地区のアップカミングがいよいよやってくるのでは?と期待せずにはいられない。また、最近のベルリンの傾向として、モダンな内装とヴィーガンを前面に打ち出すカフェやレストランが増えてきているように感じている。



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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