ある取材でポツダムから程近いカプート村にあるプライベートヴィラへ行って来た時のこと。実はポツダム方面へ行ったのはこの時が初めてな上に、時間がなくて全くリサーチせずに行ってしまった。そのため、ベルリンから1時間も掛からず行ける場所なのに全然違う環境に驚くことばかりだった。
まさに日帰りで行けるリゾート地といった感じで、豊かな森林と湖に囲まれた美しい自然は、安易な例えかもしれないが、軽井沢を彷彿させた。もっと人の手が入っていないそのままの美しさがある。
建物もドイツのどっしりした重厚なものとは違い、オランダ建築のようなメルヘンで可愛らしいエッセンスと、どこか日本の家を思い出させる懐かしさがあった。
ほとんどの建物が一軒家で、庭付き、ガレージ付き、湖が近いことから個人所有のボートがある家も多く、別荘として所有している人も多いとのこと。そのせいか、村全体にはゆったりとした時間が流れ、優雅な雰囲気が漂っていた。
普段、グラフィティーだらけの退廃的、家は全てどっしりとした重厚なアパートメントというのがスタンダードなベルリン(これも大好きである)の環境の中にいるため、久しぶりに味わうリゾートな環境にすっかり魅了されてしまった。しかも、アクセス抜群とあって、行きたい時にすぐ行けてしまう便利さ。
日本の場合、都心から観光地へ行くのに車だと渋滞、電車だと最寄りまで行かず、そこから本数の少ないバスに乗り換えたりと不便なことが多い。地方に住んでいたら車がないとどこにも行けない。苦労する分素晴らしい景色や食べ物が待っているけれど、大型連休に遠出したいという気持ちはいつの間にか消えてしまっていた。
その点、ドイツは電車もバスもとても便利で、しかも安い。日本の新幹線や特急と同じように長距離用列車があり、何度も利用しているけれど、ストライキなどの特別な事情がない限り満員になることはない。シートもゆったりしていて快適な列車の旅を楽しめる。別料金になるけれど、自転車も一緒に乗せれるため、現地に着いたらサイクリングを楽しむことも出来る。
今回は残念ながら気温が低く、天気も安定しなかったため、ボートに乗ったり、湖沿いをゆっくり散歩することが出来なかったけれど、水面はキラキラと輝き、ボートがゆったりと通り過ぎ、マイナスイオンで心地よい湿度、そんな中で、地元で採れたBIO野菜や果物を使った料理とお酒を堪能出来たら最高!次は夏に来ることを想定して今からワクワクしている。
ちなみに、カプート村はアインシュタインの家があることでも有名な場所。家と言っても夏の間過ごすためだけに友人の建築家コンラート・ヴァックスマンに作らせた別荘であり、住んでいたわけではないらしい。当時は人口も少なく、人目に触れることなく、湖でヨットに乗り、短い夏を楽しんでいたとのこと。
そういった歴史的なエピソードを聞くと、相対性理論などには全く詳しくないけれど、偉大な人物を多く輩出したドイツにいるのだなあと実感させられる。
宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。