麻織物の湖東繊維工業協同組合(滋賀県東近江市)は4月15日に滋賀県庁で会見し、伝統技法の「こんにゃく糊(のり)付け加工」による麻糸を用いたTシャツの開発と、組合のブランド「蒟蒻麻絲」(こんにゃくあさいと)の立ち上げを発表した。現在実施している応援購入サービス「マクアケ」のプロジェクトは、開始後1週間となる同日時点で目標金額の9倍となる180万円(サポーターは130人)を超え、「大きな自信になった」と手応えを得ている。
加工は、創業から110年以上を糊付け一筋というユニフルが手掛ける。こんにゃく芋を使い、糊の濃度を調整しながら糸の表面を均一にコーティングする熟練の職人による技術だ。麻の吸湿性や速乾性を生かしたまま糸の表面を滑らかにする。糸染めは、澤染工が特殊な染料で表面だけを染める独自の「ル・ポワン染め」で、「ゆっくりと経年変化を楽しめる」という。

丸編みはオカザキニット(和歌山市)が協力した。糸へのテンションを抑えながら低速でゆっくりと編み立てた。これに染色加工の大長がクール加工し、上質な光沢と接触涼感性を付与。裁断から縫製、検品はファイナル商事が一貫して担った。無地のTシャツは一般販売予定価格が税込み1万7600円。柿渋染めなどで知られるおおまえが一つひとつ手捺染したTシャツもある。価格は2万9700円から。温度によって色が変わる染料を用いてプリントした商品もある。


同組合は「近江の麻」「近江ちぢみ」といったブランドを立ち上げ、夏用の寝具や座布団カバーなどを主力製品にしてきた。一方で伝統的な麻糸の技術を生かし、新しい需要の開拓に取り組むなかで約4年前にニットの開発に着手。麻糸は比較的硬く、伸びにくいためニットには不向きとされるが、技術・ノウハウを蓄積して今回のTシャツを完成させた。
Tシャツは近江八幡市にあるアンテナショップ「麻香」や彦根市の飲食・アパレルショップ「ナウオン」でも販売する。6月には大阪・関西万博の同県主催イベントでも出展・販売する。
今後はほかの製品や新しい糸、生地を開発し、海外も含めた様々な需要や販路の開拓を目指す。「3年間の累計で億円単位の事業にしたい」考えだ。