商品で世界中の人と会話したい
次々とわき出るアイデアで、新市場を作っている。20~30代の婦人服をリードし、次は何かと注目する同業者も多い。近藤広幸社長は自らを「根っからのあまのじゃく」と言い、既成の〝つまらないこと〟を面白くしてやろうという好奇心にあふれている。
3年は我慢する
――物作りに投資してきた。
ブランドが利益を得られるまで3年はかかる。それまで経営者が我慢できるかどうかだ。社員に絶対うまくいくと言い続け、チームに勇気を持たせ、赤字でも投資し続けられるのは、自分が思いついて、しっかり納得したことだから。
例えば「リリーブラウン」は、原価率58%から始めて3年かけて30%台後半にした。3年間で反省点をたくさん蓄積した強いチームの頑張りがお客やメディアに伝わり、数字もぐっと上がり出す。そこは投資と思っている。「スナイデル」「ジェラートピケ」は高収益事業。でも、「フレイアイディー」、リリーブラウンは投資額を回収しきるのはまだこれからだ。
うちの人数、売り上げと同水準のほかの会社なら、利益額は2倍かも知れない。でも、必要以上に経費を抑えず、社員が目をキラキラさせて働けるやりがいを追求したい。ブランドを育てることに、経営者はタッチしなくていい。それよりも、強いチームが築けているかを考え、そのために声を掛け、人を育てる気持ちが重要だと思う。
――服を売ることに自信を失っている経営者が多い。
僕には分からないな。服は衣食住の一つで、先進国はこの三つを向上させて人生をどれだけ豊かにするか。自分たちはそれをサポートする仕事だと思っている。洋服へのニーズが減っているならば、だからこそ、より魅力的でオーラが出る服を作らなきゃと思う。物を作る人に愛情を注ぎ、商品に自信を持ち、センスも教育してきた。そこをもっと強化しなきゃいけない。
喜ばせたい一心
――もっと高い服に興味はないか。
とにかく人を喜ばせたい一心でやっている。なかったものを形にし、そうそうこんなの欲しかったと喜ばせたい。高いことで与えられる喜びって何だろう? 自分の中で、そこで満面の笑みが得られるようなイメージがわかない。売れるものはこうだと思ってブランドを作っていない。こういうニーズがあるはず、そこを起点にしている。
――グループ売上高428億円は、想定通りか。
こんなに大きくなるなんて全く考えていなかった。思いついちゃったから、やるしかないとここまできた。会社の将来像は僕が考えることじゃないんじゃないかな。僕や社員の思いつきの回数が減らなければ、そして、油断することなく取り組んでいけば、会社は少しずつ大きくなっていく。謙虚に、チャレンジ精神を持って。
将来的には、資金をとことん蓄えた状態で、米国で利益を出したい。米中日のファッション市場の売り上げがダントツで、たまたま3位の日本にいる。中国、米国でもディベロッパーとウインウインの関係を築き、商売を成り立たせたい。自分は色んな言語が話せるわけじゃないから、言葉が通じないところに表現で通用するか、挑みたい。商品で世界中の人と会話する、そこにロマンを感じますね。
=おわり
(取材=金谷早紀子)