様々な仕掛けで顧客化
グレード、テイストを全館統一
松屋社長 秋田正紀氏
銀座本店は13年9月の全館改装に続き、14年4月に食品売り場を改装した。消費増税の逆風を改装効果とインバウンド(訪日外国人)需要の拡大で乗り越え、増収増益基調を確保する。グレードとテイストの引き上げで、全館の買い回りが向上した。15年は改めて独自性のある百貨店作りの進化が問われる。
■顧客を増やし固定化
――一連の改装の評価は。
重点の2階インターナショナル雑貨は09年から完成まで4期に分けて改装を実施しました。インポートのお客様は一気には定着しません。段階的な改装で時間をかけて徐々に顧客を増やし、固定化することができました。
定着化に向けては、これまでのブランド、ショップからの働きかけだけでなく、来店促進のイベントや話題性のある文化催事など館からの発信を強めています。昨年12月に関連会社のアターブル松屋がオープンした結婚式場「リュド・ヴィンテージ目白」を活用し、お客様を招いて、楽しんでいただく催しはその一例です。
――全館の買い回りが向上した。
強化した婦人靴は「クリスチャン・ルブタン」「ジミーチュウ」「ロジェ・ヴィヴィエ」など世界的ブランドを揃えることができました。ファッション感度の高いお客様がさらに増え、全館の買い回りに波及しています。
例えば4階ランジェリーはインポート商材の売り上げが昨年9月以降、伸びが目立っています。同様に、改装でグレート、テイストを高めた食品との回遊性が高まりました。
象徴的なのは新規客の増加です。自社カードの新規獲得の増加に加え、他社クレジットや現金が伸びています。
――売り上げ増はインバウンド頼りではない。
免税売り上げを除いた売上高は上期が前年同期比6%増、改装が一巡した下期も前年実績を上回る水準です。インバウンドを含めると、14年9月以降の累計売り上げは2ケタ増を維持しています。全体では想定を下回るゾーンもあるが、仕掛けないと売り上げは伸びません。一層の購買意欲を高める施策を強める考えです。
今秋にシステム更新を計画しています。これまで蓄積してきた顧客データがより分析しやすくなり、今後のMD、販促のための仕掛けに活用していく考えです。携帯端末を導入することで、決済時での待ち時間が大幅に短縮する見通しです。
■税売り上げ3倍に
――免税売り上げが上期に2倍となり、インバウンドが上振れしている。
免税売り上げは免税品目が拡大した昨年10月以降、従来のハンドバッグ、靴などが2倍を超え、化粧品や食品など消耗品を含めると3倍になる月があります。金額ベースで非消耗品が10に対して消耗品が1の比率ですが、件数が急増しています。
インバウンドは今後も増えるだろうが、第一に日本のお客様に商品、サービスを提供するのが基本です。その上で、外国人客の日本に対する憧れを買い物体験で味わっていただく考え方に変わりありません。
タイの商業施設や中国の銀行と組んで、現地の有力顧客へのアプローチを強めます。待っているだけでなく、外国人客の来店促進を積極化する考えです。
――浅草店の方向性は。
浅草店は商業施設「エキミセ」との相乗効果で、収益向上に結び付けます。利益が出る構造になり、投資がしやすくなりました。主力の食品の改装効果や上層階の衣料品が安定したことが下支えしています。今年から元日営業を始めたのは、地域からの要望に応えるためです。初詣客らに対応する公共的な施設の一つとして役割を果たす考えです。