メトロポリタン美術館で「アバウト・タイム」展

2020/11/05 10:59 更新


 メトロポリタン美術館、コスチュームインスティチュートの新しい展覧会「アバウト・タイム:ファッションとデュレーション」(デュレーションは持続、存続)が、始まった。5月初めの予定だったが、コロナ禍で延期になっていた。21年2月7日まで。

 1870年から現在まで、服のデザインやシルエットが時代を超えて存続してきたことを検証したもので、ほぼすべての服は2点ずつセットで展示されている。例えば、1885年に米国で作られたドレスと1986年の「ヨウジヤマモト」のコートは、似たようなバッスルスタイルだ。1895年に米国のアーノルド夫人が作ったディナードレスの袖と、2004~2005年秋冬の「コムデギャルソン」のアンサンブルの袖は似たようなボリューム感がある。

1895年にアーノルド夫人が作ったディナードレス
「コムデギャルソン」04~05年秋冬

 部屋は二つ。一つ目は照明が暗く、時計の発光目盛を連想させる細長い照明がちりばめられ、中央には行ったり来たりする振り子が天井からつり下げられている。時が刻まれるなか、時代を行きつ戻りつするファッションの特性を思い起こさせる演出だ。

振り子が下げられた部屋

 二つ目の部屋は、一変して明るい。1973年にホルストンがデザインしたドレスにエルザ・スキャパレリのベルトを合わせると、1996年にトム・フォードが「グッチ」でデザインしたドレスに似たルックができることを示す展示もある。見る人によっては、「これはそんなに似ていると言えるのか」と思うものもあるかもしれないが、そんな議論も楽しめそうな展覧会だ。

二つ目の明るい部屋

 出口の手前では、「ヴィクター&ロルフ」による2020年春夏コレクションのドレス1点をデジタル映像で見せる。ヴィクター&ロルフは2016年以来、残布を使ってオートクチュールコレクションを作っていて、このドレスはレースをパッチワークし、産業革命以前のシルエットのドレスに仕立てたものだ。手作業やサステイナビリティー(持続可能性)など、ファッションの未来を暗示する例として取り上げられている。

 10月26日に行われたプレス内覧会は見学だけで、会見スピーチはオンラインとなった。ガラパーティーはなく、スポンサーのルイ・ヴィトンによる特製マスクとマスクを入れるポーチが参加者に配られた。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員、写真はメトロポリタン美術館提供)



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