《めてみみ》不透明の責任

2019/06/13 06:24 更新


 「増税前の夏! 今こそ買い替え!」。先週末、家電店から夏のフェアの案内メールが届いた。「増税前」の注釈に「政府発表の予定通り、10月1日に消費税が増税される場合」とあり、笑ってしまった。

 消費増税の延期説が広がり、家電店も先行きが不安だったのだろう。「対策は準備しているが、本当に増税は実行されるのだろうか」という流通関係者も多い。ただ、週明けの各メディアによると、増税延期説の根拠だった7月の衆参同時選挙はないようで、増税は予定通り実行されそうだ。

 経済産業省と中小企業庁は、消費増税に伴って導入する軽減税率と補助制度、中小企業を対象にしたキャッシュレス決済時のポイント還元補助制度を浸透させるためのフェアを全国で開いている。経産省や業界団体幹部らによる「総決起大会」も行われ、東京では世耕弘成経産相も出席した。

 政府は中小企業を対象に複数税率対応のレジ導入費用の一部などを補助するが、5月末時点で補助金申請は当初見込みの約35%。ポイント還元制度も「制度が複雑で、効果も見極めにくい」ため、申請に躊躇(ちゅうちょ)する業者は多い。増税が実行されるのか不透明だったことも背景だ。

 不透明感を広げたのは政府の責任だ。フェアが終わっても、制度を浸透させ、増税後に大きな混乱が起きないよう十分な対策を取ってほしい。



この記事に関連する記事