《めてみみ》国内を見直す

2022/03/31 06:24 更新


 「なぜ日本ブランドが海外で成功できないか」。以前ある大手アパレル社長が、理由の一つに挙げたのは日本市場の〝中途半端な〟大きさ。「国内市場が小さければ、海外での成長が前提になる。日本がそこそこ大きいだけに厳しい海外で踏ん張り続ける必要はなかった」。つまり覚悟の問題というわけだ。

 十数年経ち、国内の事業環境は変わった。コロナ禍で市場が縮み、少子高齢化で成長が見通せない。商社トップに成長策を聞くと「困難でも海外市場を開拓する他はない」との声が多い。海外で伸ばすと覚悟を決め、国内に偏りがちな収益構造の見直しは成長に欠かせない。一方でコロナによる都市封鎖、戦争、クーデターなど世界はリスクにあふれ、文化も異なる。

 伊藤忠商事の岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は、「海外、特に新興国での事業は法律の違いなど難しい面が多い。国内の商売の見直しや発掘も大切なのでは」と語る。少子高齢化でも成長できるか聞くと「めちゃくちゃ、もうけるわけではないし、なんぼでもあるやろ」と返した。

 売りたい物を売るのではなく、顧客が欲しい物を組織、商材の枠にとらわれずしっかりと届ける。マーケットインで臨めば可能性があるとのことだろう。国内・海外という市場性に加え、ビジネスリスクと収益性の兼ね合いも重要だ。



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